中学生の中間試験がおこなわれております。毎日みんながんばって勉強しております。国語の単元で『奥の細道』をやっている学校がいくつかあり、試験対策の授業をおこないました。
有名な冒頭の部分と、『平泉』が範囲でした。こちらも有名ですね。
夏草や兵どもが夢のあと
栄華を誇った藤原氏のその後を思い、芭蕉は涙を流します。
そこで、ぼくはふと元阪神タイガースのエースを思い出したのでした。甲子園を春夏と制覇し、ドラフト1位で競合しながらも阪神に指名され、一年目から三年連続十勝以上をあげる活躍で、ファンのだれもが、新しいミスタータイガースの誕生に心躍らされました。
しかし、そこから苦難の道が始まったのでした。投げては打たれ、あるいは相手にデッドボールを当てて押し出しなど、とつぜん勝てないピッチャーになってしまいました。ときどき、いいときもあるのですが、長く続かず、二軍に落ちてしまうのでした。
その元エースは、阪神ではどんどん出番が減っていき、今年とうとう海外に移籍することになりました。元エースの潜在能力に期待する人たちがたくさんいたのだと思います。環境を変えればまた活躍できるのではないか……。
メジャーリーグに入りました。けれども、投げては打たれ、投げては打たれ、の連続でした。入ったチームは、今年その元エース以外のピッチャーもみんな打たれてしまって負けばかりでした。
元エースは打たれても、負けても、投げ続けました。メジャーリーグで投げるピッチャーとは思えない悪い数字になってしまいました。先発は外され、試合終盤の短いイニングだけを投げるようになりました。
いったいなにが功を奏するのかわかりません。負け続けのチームで、あまり重要ではない場面で投げ続けることによって、その元エースは、だんだんまたいいピッチングができるようになってきたのでした。試合の重要な場面でも起用されるようになり、またその起用に応え、どんどん数字もよくなっていったのでした。すると、メジャーのほかのチームに移籍することになりました。
メジャーリーグではよくあることなのですが、優勝を狙うチームは、シーズンの途中でもどんどん補強をしていきます。逆に今年は優勝は無理だろうというチームは、有力選手を移籍させ、その代わり若手の将来の希望になりそうな選手と交換したりします。その元エースは、優勝するために必要な戦力として、首位を走る強いチームに望まれて移籍したのでした。すごい!
元エースは首位チームでもどんどん投げ、見事にそのチームは優勝しました。プレーオフに進出決定です。きっと、どこか重要な場面で投げるでしょう。その元エースと高校時代からのライバルで、二刀流で大活躍のあの選手ですら、まだプレーオフには(所属球団のためですが)出場したことがありません。元阪神エースのシンデレラストーリーには本当に驚きました。
『平泉』のように、栄光につつまれた時代があっても、時の流れの中では、まったくだれも思い出さなくなってしまうようなことも多いです。阪神の元エース藤浪晋太郎投手も、ファンの間でだけ、昔はすごかったんだけどなあ、といわれる存在になっていたかもしれません。しかし、そうはなりませんでした。正直、運もよかったと思います。ただし、運だけではメジャーリーグで活躍することはできません。藤浪投手の夢はまだまだ続くはずです。がんばってほしいですね。そして、『奥の細道』を勉強しているNEWSの中学生たちも、試験がんばってください!!