将棋界で大きなニュースがありました。史上最年少名人位獲得、および七冠獲得のニュースです。いうまでもなく藤井聡太名人のことですが、ありとあらゆる史上最年少記録を塗り替えてきましたが、名人位獲得は、その中でも特に大きいものだと思います。
将棋のタイトルは8つあります。その中で、名人と竜王が格上のタイトル戦となります。しかし、獲得までのプロセスは大きく異なります。名人位は、もっとも歴史のあるタイトルで、プロ棋士となった人たちが一番下のリーグ(C級2組)から1年ごとに昇級して、最後のA級を勝ち抜き、最後に現名人に勝って、ようやくたどりつきます。なので、どんなに強くても、デビューしてすぐに名人にはなれません。竜王位は、トーナメント戦を勝ち抜いていくシステムです。アマチュアも参加できるのも特色で、いま人気のあるマンガ『龍と苺』は、天才少女がプロ棋士を次々倒して、竜王位挑戦を目指すというものです。現実にはなかなかむずかしいですが、中学生でも竜王位になる可能性はあるわけです。
藤井聡太名人は各級を次々と突破し、一年だけ足ぶみしましたが、ほぼストレートで名人位を獲得しました。まだ二十歳です。それまでの最年少記録は、二十一歳の谷川永世名人でした。しかし、この差は一年ではなく、数か月なのですね。学年は同じで誕生日の早いか、遅いかの差だけなのです。もちろん、どちらもとんでもなくすごいことに違いなはいのですが……。
谷川永世名人の藤井新名人へのコメントが出ておりました。
「藤井さんに(最年少名人記録を)抜かれるのなら、むしろ光栄なことと考えています」
「将棋の強さはもちろんですが、関係各所への気配りができるところも含めていまや完璧な存在。そして、まだまだ成長を続けているすごい人です」
「記録というのはそれに相応しい人が持つべき、と考えるようになりました。40年前の言葉をもう一度使わせて頂くと、中原十六世名人からお預かりした最年少名人の記録を、無事、藤井新名人にお渡しできた、という心境です。名人獲得と七冠達成を心よりお慶び申し上げます」
なんと美しい言葉でしょうか。お人柄がうかがえます。
これから藤井七冠は、タイトルすべて獲得という八冠を目指すわけですが、谷川永世名人や、多くの棋士たちの思いを背負い、将棋界を背負って、さらに活躍してほしいと思います。