- 神奈川県の公立高校の国語の入試問題を見ましたところ、物語文の問題で北村薫氏の「ひとがた流し」という作品が使われていました。これを見たとき、ぼくは二つの点で驚きました。
一つは『北村薫の本が!』という驚きです。北村薫氏をご存知でしょうか? 日常派ミステリーという新しいジャンルを作った推理小説作家です。ここで、少し思い出話をさせていただきますと、ぼくはNEWSで作文の先生をしていたり、一応童話作家でもありますので(筆名は校舎紹介欄をご覧下さい)おわかりいただけるのではないかと思うのですが、子どものころからとても本が好きでした。といっても、文学少年や文学青年ではとてもなく、愛読書はシャーロック・ホームズから始まる推理小説ばかりでした。ぼくは子どものころよくこんな風に思っていました。
「どうしてテストや教科書に出てくる話はつまらないものばかりなんだろう」
いま思うと本当に赤面物です。決してつまらないものばかりではなかったはずです。いまでも覚えているものもあるくらいですから。けれども、その一方でほんのすこしだけ、いまもそういう気持ちがないわけでもありません。もっともっとおもしろい本は、この世に数え切れないほどあるのですから……。
なので、今年の公立高校の入試問題で『北村薫』という名前を見たときは、驚きとともに、とてもうれしくなったのです。あの推理小説家の北村薫が入試問題に使われるなんて……! いままでもどこかの学校でつかわれていたかもしれませんし、また今回の「ひとがた流し」はもともと新聞に連載されていた小説でじつはミステリーではない作品なのですが、それでも、ぼくはうれしく思いました。中学生でも、本好き、ミステリー好きの子なら、北村薫作品『空飛ぶ馬』や『スキップ』などをきっと読んでいると思います。自分の好きな作家の本が入試問題に出たら、どれほどうれしく、どれだけ勇気付けられることでしょう。北村薫氏はある高校の国語の先生をされていたという話を聞いたことがあります。自分の作品が問題に使われてどのように思われたのでしょう。ちょっとうかがってみたいと思いました。
そして、もう一つ驚いたことというのは……。
これはまた次回に書かせていただきたいと思います。
NEWS青葉台校室長
三木 裕