全国学力調査の問題と解答が発表されております。今回、中学生の問題におもしろいものがありましたので、ご紹介いたします。
まず、『竹取物語』の原文と、そのオーソドックスな現代語訳が載っております。
今は昔、竹取の翁というものありけり。
=今ではもう昔のことだが、竹取の翁という者がいた。
中学校でも習う有名な冒頭の場面です。竹が光っていて、「三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。」までが載っています。
そして、その次に、同じ部分をSF作家の星新一が翻訳したものが載っていました。
=むかし、竹取じいさんと呼ばれる人がいた。
もう一行目からずいぶん雰囲気がちがいますね。全国学力調査は、そのあと、現代仮名遣いに直す問題と、「いと」の意味を問うという、なるほどという問題につづくのですが、最後の問題がおもしろそうでした。
作家の星新一が、『竹取物語』の現代訳で、どこをどのように工夫していると考えられますか。あなたの考えを書きなさい。
解答例も載っておりまして、「よろづのこと」を「笠、竿、笊、籠、筆、箱、筒、箸。」というように具体的に書いて、翁が竹でどのようなものを作っていたのかがわかるようにしている、というものでした。
まあ、それもたしかにそうなのですが、どうなんでしょう、もっとおもしろい解答が考えられそうです。竹取じいさんだけでも、まず書けそうではないですか? ほかにも、どれも、竹カンムリだの字だ、とか、竹についてはくわしいのだ、とか、星新一のショートショートを読んでいるような表現も、いくつもありました。特に文字制限はないようでしたので、がんばってたくさん書いた子もいるのではないでしょうか。
こういう学力調査は規模がとてつもなく大きいですから、あまりたくさん書いても点数や、評価にはならないと思いますが、いっそのこと、ほかの問題は半分にして、原稿用紙1枚くらい書いてもらう形で、この問題をもっと徹底的にやったらいいのでは、とぼくは思いました。いろいろな国語の力が問われるよい問題だと思います。ほかの問題も、それぞれおもしろそうではあったのですが。
星新一の本は、ぼくも子どものころたくさん読みましたし、エッセイはいまでも大好きでよく読み返しています。現代の本好きな中学生が、星新一の名前をテストで見て、よろこんでいたらうれしいなと思いました。