- 先日たまたま手に取った本は、1ページ目に日付けが書かれており、なんと2007年7月12日となっていました。その日から、事件が起こるという話なのです。ハインラインという有名なSF作家が1951年に書いた本です。いまから50年以上前に描かれた2007年の世界は、なかなかおもしろいものでした。
- まず交通機関がかなり発達しています。自動車もあるようですが、急ぎの場合は、空を飛べる車を使うようです。また、宇宙ステーションというもの作られていて、火星、金星にも移住が可能なようです。
ソ連がまだ大国として君臨しています。ただし、かなり辛口に書かれていました。主人公がアメリカ人なのです。
そして、2007年時点ですでに、第3次世界大戦が起こっており、もう過去のものとして語られていました……。 - 宇宙生物の出てくるような本ですので、そんな荒唐無稽な話を真剣に考えても仕方が無いだろうという声が聞こえてきそうですが(たしかに物語をおもしろくするための誇張も大いにあると思いますので)、1951年当時ということを考えると、必ずしもそうとはいえない部分もあるように思います。朝鮮戦争が起こり世界中が危機感につつまれていたであろうという頃だからです。
- ハインラインという作家は、タカ派として知られていますが、だれよりも冷静な目もあったといわれています。原子力爆弾の成功にアメリカ中が沸き返る頃すでに、この爆弾の製造が他国にも広がり(当時のアメリカの科学者はその製造を独占できると信じていたそうです)、それゆえの緊張をともなった冷戦状態に世界中がおちいるだろうということを予測していたといいます。そのハインラインが思い描いた2007年では、すでに戦争が起こっていて、さらに新たな脅威も生まれている時代だったのです。ただし、最後は人間の勇気と知恵が困難を乗り越えていくという、これもまたハインラインらしい終わり方になっていたのですが。
- いまから50年後、2057年には、どのような世界になっているのでしょう?ハインラインの本にはなくて、いまの世界にあるものはたくさんあります。携帯電話にパソコン、インターネットなどもそうです。しかもほとんどの人が所持、利用をしているものばかりです。そして、幸いなことに『いまのところ』第3次世界大戦は起こっていません。
- 2057年にハインラインの本を読んだ人が、戦争のことを完全に過去のものとして読むような、そんな時代になっていればと思います。子ども達に伝えるべき、大人の責任だと思います。
NEWS青葉台校室長
三木 裕