伊坂幸太郎さんの『アヒルと鴨のコインロッカー』という本を読みました。とても人気のある作家さんですが、ぼくは初めて読む作家さんでした。映画にもなっているそうです。
ミステリーなので、内容については避けますが、たくさん散りばめられた伏線が、美しく、悲しく回収され、多くの余韻が残る本でした。
さて、物語とはあまり関係ないのですが、この本に『仁和寺の法師』のお話が出てきました。
「ニンナジノホウシ?」
「仁和寺の法師が、一度でいいから岩清水八幡宮を拝みたいと思って、出かけたわけ。 でも、一人でよくわからないから、ふもとの別の神社を拝んで、何だこんなものか、と帰ってきちゃう話」
「徒然草でしたっけ?」
「何事にも案内人が必要だ、っていう教訓だけど、わたしは、知ったふりをせず何でもかんでも人に頼れ、という教えだと信じている」
主人公の大学生と、謎の女性の会話です。徒然草の『仁和寺の法師』は、中学生の教科書のほとんどで使用されていますので、ぼくも毎年子どもたちに教えています。吉田兼好が、何事にも案内人が必要だと書いておりますので、そのように教えるわけですが、『知ったふりをせず何でも人に頼れ』という解釈も魅力的ですね。実際、仁和寺の法師は、人に頼らず、肝心なものを見ないで帰ってしまったわけですから。あっちに行く人が多いなと疑問に思ったのに、だれにも聞かなかったのが、失敗だったのです。
現代のミステリーの本にも、ときどき、こういうふうに古典が出てくるときがあり、うれしくなります。子どもたちにも話してみようと思います!