- ぼくの本の読み方は、ちょっと風変わりかもしれません。1冊の本を読み続けるということはあまりせず、5~10冊くらいの本を平行して、あちらこちら読むのが好きなのです。子どものころ、寝る前に枕元にたくさん本を並べて、次から次へと少しずつ読んでいくというのが、至福のときでした。それがいまでも続いているようです。
- 読書好きの人からすると、あまり賛同してもらえない読み方かもしれません。けれども、いろんな本が読みたい! という欲求も非常に強いわけで……。また、その中でも、一気にそれだけを読んでしまうような本も時にはあるわけで、そういう本にめぐりあったときは、本当に幸せになります。
- そして、こういう読み方だからこそ、という楽しみもあります。先日、ある本の中に「しんいんひょうびょう」という言葉を見つけました。「神韻縹渺」と書きます。「なんともいいようのない、すぐれたおもむき」というときに使う言葉のようです。ぼくは初めて知りました。ぼくは本を閉じ、また、別の本を開きました。すると、そこにまた「神韻縹渺」が載っていたのです! 最初の本を読んでいなければ、なんのことかわからなかったでしょう。新しい言葉に、立て続けに出会う確率というのは、どれくらいあるでしょうか。自分でもびっくりしてしまいました。
- ちなみに先に読んでいた本はSF作家の星新一のエッセイで、次の本は三島由紀夫の評論の本でした。まるっきり違うジャンルの本を読むというのも、ぼくの読書の楽しみの一つなのですが、三島由紀夫は自分でSF小説を書くほど、SFに理解のある作家ですし、今回「神韻縹渺」と評論で高く評価していた作品も幻想作家稲垣足穂の小説ですから、まるっきり異分野のものとはいえないかもしれません。
- 読書の楽しみはたくさんあります。新しい言葉に出会うこともその1つです。ふだんなかなか「神韻縹渺」を使う機会はないかもしれませんが、「なんともいいようのない、すぐれたおもむき」のものに出会ったとき、ぜひ使ってみたいと思います!
NEWS青葉台校室長
三木 裕