たまたまハヤカワ文庫の中にはさまれています新刊案内の紙を見てみましたところ、懐かしい『夏への扉』の文字がありました。ロバート・A・ハインラインという人の書いたタイムマシン物のSF小説です。もうずいぶん昔に書かれた小説がなぜいまごろ? と思いましたら、新訳となってまた出るようです。
『夏への扉』をはじめて読んだのは、中学生か高校生のころだと思います(何年前かは……気にしないでください)。とにかくおもしろい小説だと思いました。翻訳者は福島正実さんで、当時から福島さん訳の本なら絶対おもしろいみたいなことを思っていました。(ちなみにミステリーでいうと詩人の田村隆一訳のものは絶対おもしろいというぼくの基準もありました。)
『夏への扉』は、とにかくおもしろかったです。最後の一行まで好きでした。読んだ人にはよくわかると思います。新訳となり、あのおもしろい本が、また新たなファンを獲得し、特に若い人たちに読んでもらえるというのはとてもうれしい反面、自分が好きだったあの本が、言葉が、変わってしまうのは、ちょっぴりさみしい気持ちもします。
なかなか本を読んでくれないとおっしゃる保護者の方は多いです。たしかに、むりやり本を好きにさせることは難しいでしょう。けれども、自分が好きだった本や、いま好きな本をいっしょに読んでみると、とてもよいきっかけになります。どうぞごいっしょに本を楽しんでいただきたいと思います。本屋さんにいっしょに行くだけでも楽しいと思います。
ぼくもとりあえず本屋さんで、『夏への扉』のあの最後の一行がどうなっているのか、それだけはたしかめたいと思っています。
NEWS青葉台校、センター北校室長
三木 裕