先日、たまたま島崎藤村の随筆集を読んでいたところ、『模範綴方全集』序のことばとして、次のようなところを見つけました
『どんなに小さな草の芽でも、花咲く時のないものはない。それと同じように、どんな人でも自分に持って生まれたもののない人はいない。それを粗末にしないところから出発することこそ、年幼い人たちのつとめではあるまいか。そういう芽がみんな延びて、やがて緑もそい、花の鬘(かずら)をつけるとしたら、おそらくこの国土は好い綴方で一ぱいであろう。』
すなおな心で物事を味わい、すなおな心で文章を書こうということが繰り返し、他のところにも書かれていました。それはとても難しいことでもあるのですが、すぐれた古人は、みな最後までそのような気持ちを持ち続けた人ではないか、とまで藤村は書いています。
では、すなおな心を持つためにはどのようにすればよいのでしょうか。一番先にしなければいけないことは? 藤村の答えはこれです。
『それには、先ず自分の持つものを粗末にしないところから出発したようである』
自分に自信を持たない子、なにかいってもすぐに「無理」といってあきらめてしまう子、どうせ自分なんてできないに決まっている……、そう思っている子のなんて多いことでしょう。自分の持つものを粗末にしてしまうのは、その子だけの問題ではありません。まわりにいる大人たちがどんどん見つけていってあげなければいけないのです。どんな子の作文にも必ず光る言葉があります。それをどんどん、どんどん見つけていっていくために、作文コースだけではもちろんなく、すべてのコースをあわせNEWSはあるのだと信じています。藤村の随筆集の別のところにこんな言葉がありました。
『文章を添削することは心を添削することだ。その人の心が添削されないかぎりはその人の文章が添削されようがない。』
まさに自分に語られている言葉だと思いました。これからも心をこめて授業をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
NEWS板橋校室長
三木 裕