ふだん、作文のカリキュラムなどを作っておりますので、いろいろな本や新聞などで作文について書かれているものを見つけると、どうしても気になってしまいます。今日は小林秀雄の本の中から以下のような文章を見つけました。
『作文教育でも、正確な写生文というものを基本とすべきである。写生の対象は、外部にあるはっきりした物に置くがよく、無定形な自分の心などというものを書かせるべきではない。そんなことが上手になると、生徒は思いつきのなかに踏み迷うことが楽しくなり、ついに自分の個性を信じなくなるだろう。』
あの小林秀雄にここまではっきり書かれてしまうと、どきっとしてしまいます。まさに、無定形な自分の心というものを特に書かせよう、書かせようと思っているぼくといたしましては……。
ただ、大事なところは同じ思いだと思います。『正確な写生文』を基本とすることです。正しい文章を書くためには、なによりも正確な文章が必要です。相手に正しく伝わらない文章を作文で書いてはいけません。そのためのお手本として、作文の先生が文章を書いて指導することはとても大切だと思います。
そして、その上で……、ぼくがこだわりたいのは、やはり『自分の心』なのですね。小林秀雄が書くとおり、思いつきのなかに踏み迷うことのみ楽しんでしまうと、文章をおろそかにしてしまう危険があります。また、先生や大人の顔色を伺って、ほめられる作文のみに固執してしまうといったこともありえるでしょう。
自分の個性を伸ばし、自分の個性を信じるためには、前回のコラムで書きましたが、すなおな心で書くことが大切です。そして、それを常に見つけてあげる大人が絶対に必要です。NEWSがその場であることを、ぼくはこれからも意識していきたいと思います。
NEWS板橋校室長
三木 裕