『奇跡のレッスン』というテレビ番組に、以前、ぼくが教えていた女の子が出演するというので、見てみました。最初はその女の子ばかり探していましたが、すぐに番組に引き込まれていきました。
作家の重松清さんが十二人の子どもたちに小説を書いてもらうレッスンをします。けれども、すぐには書かせません。
小学校の中を見て回ったり、公園や商店街を回ったりして、観察して、想像してもらうようにします。
途中で、保護者の方へのお話もあり、重松さんは、「レッスンのあと、言葉というものを好きになってもらって、みなさまにお返ししたい」と語っていました。そして、子どもたちも、重松さんの言葉に、どんどん心を開いていったようでした。
「人生の正解は人の数だけある。最短コースだけではない、いろんな人を見てほしい」
「回り道は悪いことではない」
「初志貫徹もすばらしいかもしれないが、もしかしたら、もったいないかもしれない」
子どもたちの一人は、このようなことを読んだことはあるけれど、面と向かっていわれたのは初めてで、泣きそうになりました、といっていました。
「心の中のもやもやしたものを言葉で表現するのが小説だ」
「内面に優劣をつけてはいけない」
「全肯定する」
「そこにあるだけでいい、それをいうのが、ぼくの役目」
子どもたちは、とても悩みながら、全員が作品を書き上げました。最後に重松さんはいいました。
「みんな自慢の教え子です」
ぼくはもう途中からずっと号泣しながら見つづけたのでした。
ぼくが教えた子もがんばったようです。番組のホームページに子どもたちの書いた小説が掲載されるということで、次の日に読んでみました。その子の作品に、番組でいっしょになった女の子の名前が出てきました。テレビでは語られなかった部分です。ぼくはこのことに気づき、今回のレッスンが本当にすばらしいものだったということをあらためて深く感じ、またぼろぼろ泣いてしまいました。重松さんの言葉がまた思い出されました。
「すべての作品に自分がいた。渾身の作品です」
まったくそのとおりでした。本当にすばらしいレッスンだったと思います。とても感動しました。NEWSの授業も、もっともっと心を込めておこなわなければならない、と思いました。