今年の6月に亡くなられたメルヘン作家すやまたけしさんをしのぶ朗読会が先日の日曜日にありました。すやまさんのお人柄を知る仲間たちが今回の朗読会を企画し、ぼくもその仲間の一人として、その作品のファンとして、朗読をじっくりと聴いてきました。朗読会場にはすやまさんのご本が何冊も置かれていて朗読会の後、しばらく読ませていただきました。すやまさんが亡くなられたときの小さな記事を見つけましたので載せさせていただきます。
ファンタジー作家のすやまたけし(本名:須山健史)、肺炎のため12日死去、60歳。
1951年東京都武蔵野市生まれ。日本大学理工学部を卒業。23歳事故で車椅子生活に。78年やなせたかし編集長の雑誌「詩とメルヘン」に投稿を始める。詩からショート・ストーリーに転じ、「詩とメルヘン」「ショート・ショートランド」に入選。
「素顔同盟」が中学3年用の教科書に掲載された。
パーティーで何度かお会いしたすやまさんのなんとかっこよくて、やさしかったことでしょう。初対面で、緊張するぼくらに、気さくに話しかけてくださり、2次会のお部屋でのパーティーにも呼んでくださいました。その後、実際にNEWSの授業で、すやまさんの『素顔同盟』を生徒に指導したとき、ぼくがどんなにうれしく誇らしかったか、すやまさんに話したこともあります。すやまさんはにこにこして、中学生さんからくるメールなどのお話をしてくださいました。
朗読会で読まれた作品はもちろんすばらしかったですが(ぼくの好きな『霧笛』も読まれました)、その中で紹介されたすやまさんのお言葉の中に、とても心に残るものがありました。『とりあえず』と『にもかかわらず』の2つです。すやまさんがメルヘンを書こうとしたとき、まずは『とりあえず』やってみよう、そして、出来に不満がある『にもかかわらず』送ってみよう、その2つの言葉の精神で、ご自分の道を切り開いていかれた、というお話です。
なんとやさしく、心強い言葉なのでしょう。ただのありふれた言葉であったはずのものが、すやまさんのお心を通して、一編の詩に、一編のメルヘンになっているようです。多くの子どもたちに『とりあえず』『にもかかわらず』の心を伝えられたらと思いました。もちろん大人であるぼくがまず勇気をもらいました。すばらしい朗読会に参加できて本当によかったです。ありがとうございました。
NEWS板橋校室長
三木 裕