前回のコラムで書きました新美南吉の『去年の木』の読書感想文の授業の作品がぞくぞくと集まってきています。今回はNEWS大泉学園校の先生から送っていただきましたすばらしい感想文を一部だけの抜粋で申し訳ないのですがご紹介したいと思います。
『去年の木』という物語は、木と小鳥の物語です。一本の木が切られ、仲良しの小鳥がどこへ行ったのか探し、ついに木は工場でマッチになったことを知ります。マッチは少女の家のランプをともすために使われました。小鳥は木のために、木が好きだった歌をうたい、ランプの火がゆれて終わります。子どもたちはどんな感想文を書いてくれたでしょうか?
まず一人目は、Kくんです。『長い命』とう題で書いてくれました。
『ぼくは命について、いろいろ考えました。一つ目は、命はいろんな形になってつなぐ、ということを考えました。』
去年の木は、人間に切られて、マッチの軸になりました。マッチはランプをともす火となり、少女を照らします。けれども、Kくんは、物語に出てきたマッチ以外にも思いをはせたようで、人間の命をつないでいく姿を想像して書いてくれました。NEWSの感想文は細部まで徹底的に読みますので、逆に大きな広がりを生み出すのに一種の飛躍が必要な事が多いのですが、Kくんの感想文は見事に命という大きなものを初めの段落から書いてくれました。
その後、Kくんは新美南吉が29歳の若さで亡くなったことに着目し、南吉は自分の思いを物語に込めたのではという形でまとめ、最後にそれを自分のものとして書き加えています。
『たくさんお話をかいて、この去年の木などのお話を読んだ人の心にのこっていれば、そのいでんしをつなげると新美南吉さんは思ったのでしょう。ぼくの心にも新美南吉さんのいでんしがくわわりました。ぼくの命には、せんろのように長い長い命のいでんしがあります。』
命の大切さを見事に書いてくれました。本当にすばらしい感想文ですね。感動しました。
もうひとりご紹介します。同じくNEWS大泉学園校のOさんの作品です。とても、丁寧に作品を読み込んでいることがうかがえました。そして、そこからしっかりと自分の意見を生み出しています。人間に切られてしまった木はどう思うでしょうか。やはり悲しいという気持ちになるでしょう。けれども、Oさんの感想文はその先も考えて書いています。
『わたしは、なかよしの木が切られてしまったとしった小鳥は、かなしかったと思います。切られていく木もかなしかったと思います。でも、火になった木は、うれしかったと思います。切られてしまったけれど、火は暗い道をてらしたり、部屋を明るくてらしたり、かまどに火をつけることができ、人の役に立てたからです。もしも、木が人の役に立てたということを小鳥が知ったら、とてもうれしいと思います。』
つづけて、Oさん自身の感想として、かなしいけれど、かなしいばかりでなく、うれしいところもある、と書いてあります。そして、最後はこう結んで終わります。
『作者の新美南吉さんは、「去年の木」というお話を書いて、人の心に火をともしてくれた人だと思います。わたしの心にも火がともりました。』
Oさんの心にはどのような火がともったのでしょう。しっかりと物語と読書感想文が一体になっています。感想文の一番大事な、そして一番むずかしいところが、読み取れていることがわかります。すばらしいですね。
2人とも本当によくがんばりましたね! とてもすてきな感想文でした。これからもたくさん作文を書いてください。また読めることを楽しみにしています!
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕