NEWS板橋校の高校生の女の子に聞かれました。
『時間とはなんでしょうか?』
むずかしい質問ですね。高校のレポートで提出するためにいろいろ調べているのだそうです。大昔の時計や、日本の旧暦など、すでに調べたことについて教えてもらいましたが、その中に、タイムトラベルを扱った小説などもありました。H・G・ウエルズの『タイムマシン』、筒井康隆『時をかける少女』など、有名な作品がやはり多いです。
タイムマシンが出てくる小説の中で、というよりも、ぼくが読んだSF小説の中で一番好きなのは、ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』です。その子に紹介しようと思って家で久しぶりに読んでみました。1957年に書かれた本ですが、物語は1970年12月3日という設定で始まります。現実に絶望し自暴自棄になった主人公が、長期冷凍睡眠で未来へ行こうと考えます。
その後いろいろあり主人公は未来へ行きます。30年後の2000年です。そこでは、家事を行うロボットが活躍しています。新聞の写真は立体に見えるようです。『月世界定期便、双子座流星群のためなお空中に待機中、静止ステーション二ヵ所に破損、死傷者なし』なんて記事が出ています。そういえばこのあいだ双子座流星群がありましたね。寒くて、眠かったので1つも見られませんでしたが……。まあ、それはともかく、この本の中では、かなり科学が進歩しているように書かれていますが、現在の日付としてはもう12年も前なのですね。驚いてしまいました。物語の必要上書いた部分もあるでしょうし、1950年代の科学の進歩のスピードからすると、これくらいできると感じた部分もあったかもしれません。
ぼくがこの本を好きな理由はいろいろありますが、とにかく最後が文句なしのハッピーエンドで終わることと、未来はすばらしいと堂々と書かれていることの二つが大きいです。最後の一行がとにかく最高なのでここに書こうかと思いましたが、これから読む人の楽しみをうばうことになりますのでやめておきます。そのかわり、未来へのメッセージを載せておきましょう。福島正実の名訳です。
『未来は、いずれにしろ過去にまさる。誰がなんといおうと、世界は日に日に良くなりまさりつつあるのだ。人間精神が、その環境に順応して徐々に環境に働きかけ、両手で、器械で、かんで、科学と技術で、新しい、よりよい世界を築いてゆくのだ。』
こうやって、小説の主人公のように言い切れる大人が何人いるでしょう。ひさしぶりに、ほんのさわりだけですが読み返してみて、また元気をもらいました。今度じっくり読み返してみようと思います。
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕