もうずいぶん前に読みました五木寛之氏のエッセイに次のような内容のことが書かれていました。
自分は通夜、葬式には参加しない。しかし、故人を偲ぶために、その人の書いた本を一冊読むことにしている。
行かない理由は、ご自分の年齢のことや、交友関係の広さなどもあるのかと思われますが、お通夜の代わりにその夜、亡くなられた方の本を読む、というところが妙に印象に残り、それ以来なんとなく、ぼくも好きだった作家が亡くなったときに真似してみたりしています。
連城三紀彦氏が亡くなられたことをニュースで知りました。熱心なファンとはいえないのですが、初期のころのミステリーを以前は読んでいました。映画にもなりました『恋文』で直木賞を受賞し、恋愛小説の名手として名高いですが、本格ミステリー作家としての連城氏のファンも多いのではないかと思います。ぼくは『変調二人羽織』という短編集が好きでした。
ニュースを見て、久しぶりに読んでみたいと思い図書館へ行きました。ぼくの探していた本はなかったのですが、『一瞬の虹』というエッセイ集がありましたので借りてきました。読み始めてすぐに、これは前に一度読んだことがあると思い出しました。図書館で本を借りることが多いぼくにはよくある話です。ただ、ほとんど忘れていましたので読み進めていたところ、以下の文章にぶつかりました。
この頃から僕は少しずつミステリーを離れていった。
この本の中の、現実の人々の言葉の重さについて書かれていたところでの文です。意外に感じました。恋愛小説を書いていても(あまり読んでいないのですが)、どことなくミステリーの要素があるように思っていましたので……。ただ、このエッセイを書かれたあとも、ミステリー作品をたくさん発表されておりますので、いわゆるせまい意味での(トリックなど)ミステリーよりも、人の心のミステリーに比重を置いたということなのかもしれません。
一冊の本から、さまざまな世界が広がります。ぼくはせまい意味でのミステリーも大好きなのですが、せっかくの秋の夜長ですから、ふだん読まないような本にも挑戦してみようかな、と思っています。おすすめの本などございましたら、ぜひ教えてください。少し前に、そろばんの先生に教えていただいた百田尚樹作品は確かにおもしろかったです。ありがとうございます。まだまだ読書の秋を楽しみたいと思います。
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕