テレビでおもしろい番組をやっていました。虫から学ぶ生き残り術というものです。素数の年に大発生することで、他種との交配を避け、結果として長い年月を生き残る素数ゼミのお話など、いろいろな虫についてのおどろきの生態が取り上げられていました。その中で特に印象に残りましたモンシロチョウによる、リスク分散の生き残り術をご紹介したいと思います。
モンシロチョウが卵を産む場所として、キャベツ畑があります。キャベツ畑のまわりには野草が生えている場所があります。よくある光景ですね。
前提として、モンシロチョウが成長するためには、キャベツ畑のほうが、野草の場所よりも、圧倒的に有利である、という条件があります。栄養にすぐれ、外敵も少ない場所だからです。ならば、モンシロチョウが10個卵を産むとすると、10個ともキャベツ畑に産むのでしょうか。ちがうのです。10個のうち2個くらいは野草の場所に産むというのです。
キャベツ畑は、成長には適している場所です。しかし、大きな危険が2つあります。人間がキャベツを収穫してしまうことと、農薬をまくことです。その時期をうまく回避できればいいですが、その時期と重なると、全滅してしまうのです。
テレビ番組ではその関係をグラフにしていました。10個のうち、8個までをキャベツ畑に卵を産むとき、その数の多さに比例して、生き残る率も急上昇します。しかし、8個をピークにして、9個、10個となると、急激に生き残り率が下がり、0%になってしまうのです。モンシロチョウはそれを本能で知っていて、あえて10個のうち2個くらいは、野草に卵を産むのだということでした。なんと見事なリスク回避でしょう!
この番組を見て思いました。人間もリスク回避を考えて生きなければいけないな、ということをです。子どもたちがよく質問をします。どうして勉強をしないといけないの? いま習っていることなんて、大人になってもぜんぜん役に立たないことばかりじゃないの?
たしかに、大人になってから必要でないことも多いと思います。しかし、それがわかるのは大人になってからなのですね。大人になるまでは、なにが必要で、なにが必要でないか、見極めることはとてもむずかしいです。逆に、早く決めすぎて、自分の好きなこと以外の勉強を怠ることで生まれるリスクのほうが大きいと思います。若いうちに、いろいろな勉強をすることが、リスク回避につながるのです。自分が何をやりたいかを決めるのはとてもむずかしいことですが、決まっていても、必ずリスクはつきまといます。そんなとき、様々な分野の勉強がなにかの力になり、リスクを回避することにつながるかもしれません。もちろん、たくさんのことをぐんぐん吸収できるいまだからこそ、たくさん勉強してほしいということもあるのですが……。
NEWSの存在をリスク回避という考えで見たことはなかったのですが、結果として、そういう場所でもあったかと思いました。たくさんの習い事があり、それを一つの場所で経験でき、さらに、勉強も並行してできる場所がNEWSです。大人になったときに、自分の選択がまちがいでなかったと、自分の力で考え、選択できる力を身に付ける場所である、NEWSがそんな場所であるように、これからも指導をつづけたいと思います。
※2019年最後のコラムとなります。今年も一年間お世話になりました。2020年もどうぞよろしくお願いいたします。