前回のコラムで、全国学力調査の小6国語のB問題をご紹介いたしました。まど・みちおさんの詩を読んで、考えたことを書くという難問です。では、問題といっしょに公表されていた模範解答を今回はご紹介いたしましょう。
二つの詩は、まど・みちおさんの植物や動物を愛する気持ちが伝わってくるという点で共通していると考えました。たんぽぽや動物たちの仲のよい様子を想像することができて、心が温まり、やさしい気持ちになりました。
うーん。まあ、たしかにそうですね。まさに模範解答です。ただ「こんなんでいいの?」という子どもたちの声も聞こえてきそうです。こういう答を、短時間でさっと書くのも大事なトレーニングといえばトレーニングなのですが……。ちょっと拍子抜けしてしまったような気がしませんでしたでしょうか? えらそうなこといってすみません。それには理由があるのです。それは、ぼくがNEWSの子たちに聞いた答のほうが、もっとすてきだったからなのです。ぼくが聞いた答の中で一番おもしろいと思ったのは、これです。
たんぽぽは、とても人気があるんだなと思いました。
つい笑ってしまいました。そして、残念ながら×ではないかな、と思いました。けれども、よくよく考えてみると(これ以外にも書いている内容は別として)、詩の解釈としても、×ではないかも……という気がしてきました。どっちの詩にも共通していますしね。全国学力調査の採点者の方は、どう判断するでしょうか?
詩の解釈というのは、とても難しいです。正解はあるといえばありますし、それが絶対かといわれれば、時と場合によると答えざるをえません。昔みた映画『いまを生きる』という作品に、詩を点数化しようとする教科書に対して、型破りな主人公の教師がその教科書を破れ、というシーンがあります。それは極端にしても、詩は自由に味わうものだという主張には大いに共感しました。
全国学力調査の問題は、課題を克服するための道しるべとなるもののはずです。難しいB問題にあえてまど・みちおさんの詩を使うのですから、明るく、楽しく、のびのびと採点をしてほしいものです。みんなが国語をもっと好きになるような、そんな採点をしてほしいです。「たんぽぽはとても人気があるんだな」は、ぼくなら○です。ただし、それだけではまだ条件を満たしていませんから、さらに書いてもらいましょう! たくさんぼくを笑わせてくれるとうれしいです。だって、もともとまどさんの詩はこんなにすてきなんですから!
全国学力調査には、競争をあおるといった批判もあります。でも、たくさんの子どもたちが、こういう問題を解いて、楽しく考えてくれるのなら、その圧倒的な規模はやはり魅力だと思います。ただし、全国学力調査を意味のあるものとするには出題者と採点者の覚悟が問われるように思います。そして、それは、子どもたちの教育にかかわるぼくらすべての人間にも同じように求められる覚悟でもあります。一人ひとりの詩の解釈をすべて受け止めたい、それが見果てぬぼくの夢です。そんな授業をNEWSでできればと思います。
※NEWSは5/1(木)~5/6(火)はお休みです。
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕