先日、文化庁より「国語に関する世論調査」というものが発表されました。いろいろとおもしろい内容でしたが、いちばん大きく報道されたのは、『絆』という漢字に関してのものではないでしょうか。
はじめに『常用漢字』ということばをご説明します。これは、国が定めたもので、一般の社会生活における漢字使用の目安として定められた漢字のことです。最近では2010年の11月に改定され(この時期にご注目ください)、2136文字あるそうです。使用頻度の多いものを選んで作成され、改定にときに削除された漢字もあるようです。目安と書かれている通り、強制的なものではなく、新聞や書籍などで、振り仮名を振ったり、漢字を使用したりする参考にするためのもののようです。
その常用漢字にない漢字として『絆』があり、今回の調査で、もっとも漢字を使用したい例として、90%の人が選んだ文字が『絆』だったのです。
そもそも『絆』が常用漢字ではないというところに驚きます。文化庁の方のお話では、2011年の東日本大震災以降、この文字を使うことが増えたとのことでした。人と人との絆、というような使い方が増えているのは、わかるような気がします。しかし、その前(改定された2010年11月)の時点では、あまり使われない漢字だったのでしょうか? 昔はあまり絆がなかった?
人と人との絆が、昔といまを比べて、強くなっているのか、希薄になっているのかは、数値では測れません。常用漢字にあるから絆が強いとか、ないから弱いとも、もちろんいえません。あまり絆ということばに強い意味を持たせたくないと考える人もいるかもしれません。もともと目安ですから、それについて考えてもそれほど意味が無いのかもしれません。ただ、絆という漢字は、ごくふつうにそばにいてほしい気がします。ほかにももっとあるのでしょうが……。
また、ほかの調査でおもしろいと思ったものに、『憮然』の意味を聞くものがありました。(括弧の中は回答者の割合)
『憮然』 腹を立てている様子(56.7%) 失望してぼんやりとしている様子(28.7%)
本来の意味は、失望してぼんやりとしている様子なのですが、多くの人が、腹を立てているときに使っています。そして、年代別で調べてみると、なんと30歳代以下のほうが、本来の意味で使用していて、上の世代ほど、腹を立てたときに『憮然』と使うようです。意外な結果と思いましたが、若い人ほど学校などで本来の意味をきちんと習う機会が多いからではないかという解説がありました。なるほど、ですね。学校の勉強も(NEWSも!)やはり大事なのだと思いました。時代とともに意味が変わっていくことばも多く、憮然も100年後、200年後にどうなっているかはわかりませんが、若い人ほど、本来の意味で使っているというのはおもしろいと思いました。いまどきの若い人の言葉遣いは……なんて、そのうちいえなくなるかもしれませんね。教えるぼくらも注意しなければと思いました。