映画『ブレードランナー』で主人公と戦うレプリカントの役をやった俳優ルトガー・ハウアーが亡くなられたとのことです。ご冥福をお祈りいたします。
『ブレードランナー』を見たのはいつだったでしょうか。ずいぶん前のはずです。何回か見ていると思いますが、その最後のときからもずいぶんたっていると思います。
それでも、ルトガー・ハウアーという名前が出てくれば、すぐに『ブレードランナー』が思い浮かび、レプリカントが死んでしまう場面が思い浮かびます。「雨に打たれた涙のように」というのは、そのときのセリフです。いままで見たものをすべて忘れてしまう、悲しさ、虚しさを込めたセリフでした。そのまま動かなくなってしまったルトガー・ハウアーの死の場面は、この映画でも、もっとも印象に残る場面ではないかと思います。
主人公の人間よりも(ちがうバージョンもあるらしいですがそちらは見ていないのでぼかして書きます)、殺されていくレプリカント(=人造人間)に、より多く感情移入してしまう映画でした。人間のほうがおかしいのではないか? 人間のほうが残酷なのではないか?
人間以外の動物や生き物が主人公の映画や童話なども、たくさんあると思います。その中で、人間が作ったものであるレプリカントの行動が、悲しみを伴っているという点が、この映画のすごさではなかったかと思います。原作のSF小説も有名ですが、映画は、SFファンだけではなく、より多くの人たちにも、訴える作品であったと思います。アクション映画でありながら、静かで、暗い映画でもありました。いまにつづく映画や漫画、小説などにも多くの影響を与えた作品だったと思います。
一つの作品の、一つの役が、一人の俳優を永遠のものにしました。たくさんのものが、雨に打たれた涙のように消えてゆきますが、消えないものもあるのですね。また、映画『ブレードランナー』をじっくり見たくなりました。