前回のコラムで、テレビで見ました、吉田拓郎、小田和正という大物同士の対談番組の感想を書きました。お二人とも、億劫になるとかおっしゃっておりましたが、ぜんぜん年齢を感じさせないご様子でした。そして、その番組を見ながら思い出した2冊の本のうちの1冊、”疾走する”蜷川幸雄氏の本をご紹介いたしました。今回は、もうひとつ、マンガ『GIANT KILLING』30巻をご紹介いたしましょう。
このマンガはサッカーのマンガです。いつもNEWS板橋校の講師さんに貸してもらって読んでおり、とうとう30巻まできました。題名のジャイアント・キリングというのは大番狂わせという意味で、毎年降格の危機にさらされていたチームが、若い新しい監督とともに、力をつけていく姿が描かれています。監督、選手はもちろん、サポーターや、フロント、スポンサーの様子なども描かれていて、毎回、楽しく読んでおります。
さて、ではなぜ、小田さんの番組を見ながら、このマンガを思い出したかといいますと……、以下のようなセリフがあったからです。足の怪我で現役を断念した監督が、いきなり現役の選手たちとミニ・ゲームをするという場面です。ただグラウンドに立つだけではなく、代表復帰を目指すとまでいいだし、選手たちは戸惑い、怒るものもいます。監督はいいました。
小田さんと拓郎さんの対談の中で、自分らは世界を目標にしていたけれど、いまのミュージシャンはあまりそういう気がないようだ、という会話がありました。拓郎さんはそのことに対して残念に思っているようで、もっとがんばってほしい、というようなことをいっていました。自分はそう思っていたぞ、と。小田さんは、拓郎さんへの理解も、いまの状況も踏まえつつ、拓郎さんに、そう思うんだったら、自分がなにかしないといけないよ、という話をしました。小田さんはいまでも若いミュージシャンたちといっしょにさまざまな活動をされています。音楽のすばらしさを多くの人に伝えたいという話を小田さんはよくされます。きっと、あらゆる活動が、そこにつながっているのでしょう。『GIANT KILLING』の監督のセリフをつづけます。
「お前らには俺が届かなかったもんを掴める可能性だって十分過ぎる程あるんだ だってここはプロの1部リーグの舞台なんだぜ? キッズの憧れってだけじゃない そこまで辿り着けなかった者… 志半ばで散ってった者… 代わりに夢を託してる者… お前らは そんなみんなの憧れの プロフットボーラーなんだぜ?」
小田さんも、若いころに自分が音楽の道を選んだことに、我ながらよく思い切ってできたな……という話をされていました。プロとして活動し、いまなお現役であることを、もちろん喜びとして感じているとも思いますが、大きな責任も感じているようにもテレビを見ていて感じました。自分のためだけではなく、もっともっと広く、大きなもののために、現役でありつづけなければいけない、力の続く限り……。
小田さんと拓郎さんの話を聞いて、いろいろとぼくも考えることがありました。いろいろな本やマンガからもいつも刺激を受けています。まだまだぼくもがんばらなければ! そう思うことができるのも、幸せなことなのだと思います。
NEWS板橋校室長
三木 裕