今年は亥年ということで、前回のコラムで、イシシとノシシのゆかいな兄弟の出てくる『かいけつゾロリ』のシリーズを紹介いたしました。そして、今回は、日本の古典からご紹介しましょう。伊曾保物語です。日本の古典といっても、イソップ物語の日本語訳ですが……。ある中学生の国語の問題を指導しているときに、ちょうど猪が出ているものがあったのです。(少し省略しています。)
猪の子あまた居たる中に、ある猪の子、「総の司とならん。」と思ひて、
目をいからし、尾を振つてとびめぐる。
しかれども、傍輩らこれを敬はず。
「さらば。」と思ひて、羊の並み居たる中に行きて、
前のごとく振る舞ひければ、羊恐れて逃げ隠れぬ。
さてこの猪望みを達して居たるところに、狼一匹走り来たりけり。
「あはや。」とは思へども、
「我は司なれば、かれも定めて恐れん。」と思ひて居たるところに、
狼とびかかり、耳をくはへて山中に至りぬ。
羊助けず。
をめき叫び行くほどに、かの猪の傍輩この声を聞きつけて、
つひに力を合はせて助けにけり。
されば、もとの猪らに謝りけり。
ある猪の子が、「ぼくはリーダーになる!」と思って、暴れまわりますが、
だれにも相手にされません。
「それならば」と思って、羊のところへ行って暴れまわると、
羊は怖がって逃げていきました。
猪が望みをかなえたと思っているところへ、狼がやってきました。
「あぶない」と思いましたが、
「ぼくはリーダーなんだから狼もきっと怖がるぞ」と思いなおしたところ、
狼はとびかかってきて、耳をくわえて山の中へ連れて行ってしまいました。
もちろん羊は助けません。
わめき騒いでいると、仲間の猪たちがこの声を聞きつけて
力を合わせて助けてあげました。
猪の子はみんなに謝りました。
猪の子、助かってよかったです。これからは、みんなと仲良くくらしていくでしょう。お調子者ですが、なんとも憎めません。この物語からさまざまな教訓を得ることができそうですが、やっぱりいのししはかわいい、ということをぼくはあらためて学びました。今年もみんなといっしょにたくさん勉強したいと思います!