もうこちらが掲載されるときには終了しているはずですが、東京都区議会議員選挙があり、NEWS板橋校の周りでも連日、選挙カーからたくさんの名前が聞こえてきました。すると、毎日、子どもたち(特に男の子)が、とても興奮して、NEWSに来るようになりました。
「握手してもらった」
「手をふってくれた!」
「おれだったら、絶対、入れる!」
区議会議員候補は多いですから、しょっちゅう見かけます。子どもたちとまで握手して……と眉をひそめる人もいるでしょう。握手や手を振っただけで、すぐに信じてしまう(?)のは怖いという意見もあるかもしれませんし、いや案外大人も同じで、だからいつも立候補する人は政策や意見などいわず名前だけ連呼するのさ、という冷めた見方もあるかもしれません。立場や見方によって、さまざまな考え方があると思います。
では、連日、興奮してNEWSに入ってくる子どもたちを見て、ぼくがなにを考えていたかといいますと、それは「みんな本当にうれしそうだな、なんでだろう?」ということなのです。こういってはなんですが、それほど有名人というわけではありません。テレビに出てくる芸能人や、アイドルに会ったというなら、興奮するのもわかるのですが、名前を聞いても、よくわからない人ばかりです。実際に会った子どもたちの中にも、なんとかさん、と名前をいえない子が大勢いました。それでも、みんなすごい喜んでいるのですね。「おれ、今日すごかったんだよ!」とわざわざ強調して報告に来る子ばかりなのです。「学校の帰りに選挙の人に会ったんだよ」と。
自分が子どものころのことを思い出してみますと、なんとなく、やはりうれしかったような気がします。マイクで、「元気いっぱいの応援ありがとうございます!」などといわれると、本当に元気いっぱい応援してしまったりして。あれは、なんだったのでしょうか。逆に、いつから、うれしくなくなってしまったのでしょうか?
それが大人になるってことだよ、とかかっこつけたせりふをいってみたところで、あのよくわからない少年の日々のときめきの謎までは解けません。いま目の前にいる子どもたちに聞いてみたい気もしたのですが、やめることにしました。答えを聞いても、きっと自分でもわかっていないでしょうから。
ただ、一人の大人としてぼくが思うことは、大人はやはり子どもたちと真剣に向き合わないといけないのだ、ということです。子どものころ、野球に大人が混じってくると、妙にうれしかったです。家族や先生以外の大人と真剣勝負(ちょっとおおげさかな)をする場というのはあまりありません。選挙の人たちが、子どもたちのことを本物の有権者として扱ってくれたことが(それが選挙対策だったとしても)、子どもたちにはくすぐったくもうれしかったのではないでしょうか。子ども扱いと大人扱いの匙加減はとても難しいですが、ときどきは意識して、対等に過ごす時間が必要なのではないかと思います。そのとき子どもたちが感じた喜びが、大人になる第一歩なのかもしれません。
NEWS板橋校室長
三木 裕