先日、絵本作家のかこさとし先生が亡くなられました。各地の本屋さんで追悼コーナーができているようです。ある大きな本屋さんで、ぼくも見かけました。かこ先生の代表作がずらりと並んでいました。そのとき、ある絵本を見つけました。「ああ、そうだった。これもかこ先生の本だった」そう思って、つい読みふけってしまいました。そして、一週間後、もう一度行って見ましたところ、かこ先生コーナーはそのままあり、『だるまちゃんシリーズ』や『からすのパンやさんシリーズ』などは、たくさんあったのですが(先週よりも増えているようでした)、ぼくが先週読んだ絵本はなくなっておりました。
その絵本は『どろぼうがっこう』でした。なんと、どろぼうが主人公で、校長先生でもあります。浮世絵の石川五右衛門のような顔をしています。子分たちに、いろいろ悪いことを教えようとするのですが、ぜんぜんうまくいきません。そして、結局最後にはみんな……。有名なお話だと思いますので、最後まで書いてもだいじょうぶかと思いましたが、一応、控えておきます。とにかく、抱腹絶倒の絵本です。
この『どろぼうがっこう』が、かこ先生コーナーから無くなっているのをみたとき(先週は平積みでたくさんあったのです)、きっと、この本が大人気だからだな、と納得しました。かわいらしい絵の本もよいですが、とにかく笑ってしまうこの本の魅力が、多くの人につい手をとらせてしまったのだと思います。どろぼうのお話なんて……と怒る人もいるかもしれませんが、あえて、悪いことも描く、という覚悟がかこ先生にはあったのではないかと思います。そして、とにかくおもしろいものを描くという思いも……。
以前、この先生のコラムで、他の本でしたが、かこ先生について書いたことがあります(→第479回「たろうがらす じろうがらす」2017年1月5日更新)。そこに引用していたかこ先生の言葉を、もう一度ここに書きたいと思います。
『しかし、当然のことながら、時によると知らないために起きる失敗や危険や損傷が、起きることがあります。こうした不安からわが子を守ろうとしたり、手間ひまのかかることからぬけだそうとして、ついには子どもたちから未知なものに立ち向かう機会を奪い、意欲を失わせる「キョーアクムザンな人々」にならないように念じながら、この作品をかきました。』
かこ先生の一貫した思いとユーモアが、『どろぼうがっこう』や、他の絵本にもあるように思います。今回、あらためて調べてみましたら、『どろぼうがっこう』にもつづきが2冊もあるようです。うかつでした……。なんとしても読まなくてはなりません。まずなんといっても、とにかく最高におもしろいお話なのですから。かこ先生の絵本は、きっといつまでも大人も子どもも楽しませてくれるはずです。まだまだ読んでいない名作がたくさんあると思います。またご紹介したいと思います。