先日、テレビのドキュメンタリー番組で、おもしろいものを見ました。有名なイタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティとフェデリコ・フェリーニの関係を扱ったものです。ぼくは大学時代映画に凝っていた時期がありまして、たくさん映画を見たのですが、ヴィスコンティもフェリーニも巨匠中の巨匠という感じで、名画座などでもリバイバル上映されておりました。
この二人の巨匠が同時期に作品を作っていたというのも意識したことはありませんでしたが(まったく作風が違うので)、二人が撮影所でも顔も合わさない不仲だったというのは、この番組ではじめて知りました。もっとも、不仲ではあったのかもしれませんが、本人同士よりも、まわりが煽っていることのほうが多かったようで、番組では、二人の和解といいますか、二人が互いに敬意を持ち合って話している場面が映されていて感動しました。最終的にはお互いの映画の試写会にそれぞれ参加する仲になったそうです。
番組の中で、貴族出身で、学校の先生のように厳格に映画を撮るヴィスコンティと、庶民の視点から即興もまじえかなり乱暴な撮り方もしたというフェリーニを、それぞれが愛したものオペラとサーカスに例えているのが、おもしろかったです。そんなにたくさんの作品は見ていないのですが、たしかに二人の作風は、まさにオペラとサーカスのようでした。お互いの作風の違いを、それぞれの美点として(自分には無いものとして)尊敬しているのがすばらしかったです。一流だからこそわかることもあったのかと思います。そして、二人がともにいっていましたが、映画を心から愛しているということも。
作風とか個性とかいってしまうとかんたんですが、自分の表現のすべてをかけて作ったものの重みは、フィルムの1コマ1コマすべてに宿っているような気がします。いつかNEWSの子どもたちの中からヴィスコンティやフェリーニのような芸術家が生まれるとうれしいですね。と、そのまえに、自分がどう生きてきたのか、そっちをきちんと考えないといけないかもしれません。両巨匠のようにはなれないですが、自分のすすんでいる道くらいは、ちゃんと示せないといけないのかも……。テレビを見ながらそんなことを考えました。
NEWS板橋校室長
三木 裕