元ラグビー代表監督で、名選手でもあった平尾誠二氏の本を読んでいましたところ、どきっとすることが書いてありました。長くなりますが、引用させてください。
昨年のラグビーワールドカップを思い出しませんか? あの南アフリカとの一戦を。あのときは、もっともっと厳しい場面だったと思います。残り時間はなく、相手はあの優勝候補の南アフリカ、しかもワールドカップです! 何点差で負けるだろうか、あまり大差にならないといいがと願うファンはたくさんいても、勝つと思っていたラグビーファンはほとんどいなかったと思います。キックで同点にして、引き分けでも大健闘といわれたはずです。監督も、引き分け狙いのゴールを指示しました。けれども……。グラウンドにいたラガーマンたちは、全員の意思で、トライを狙うことを選び(監督はそのとき怒りまくったそうですが)、結果的に、スポーツ史上に残る勝利となりました!
平尾氏の本が発行された日を見てみますと、2012年5月1日と書いてありました。ワールドカップの3年前の本のようです。特にラグビーをする人だけではなく、いまを生きる、特に若い人たちへのメッセージが書かれている本でした。先ほど引用した部分は、つづきにこのように書かれています。
けれども、私ははたしてそれが正しいのか疑問に感じている。
「そこは選手が判断しなければならないのではないか」
そう思っている。』
まさに、ワールドカップそのままだと思いませんか? それ以上の場面で、自ら選択し、勝利を手にした選手たちにあらためて感動します。そういうふうに選手たちを指導した監督たちスタッフの力ももちろん大きいのだと思います。あの場面で、監督に逆らってまでも判断できるなんて、相当自信がないとできないことでしょう。この本では、そういう力がいま衰えているのではないかという感じで書かれていましたが、ワールドカップの試合を見た後のいまでは、そういう力を人間は持っているのだから、努力しなければいけないのだ、というふうに読めます。なにごとにおいても、自分で判断するということは、むずかしく、責任を負うものではありますが、生きていくために絶対に必要な力でもあります。たとえば、こうしたコラムを書くことも、すこしそういうところがあります。これからも、子どもたちに伝えたいなにかを探していきたいと思います。次回のワールドカップも(まだ先ですが)楽しみですね。その前にもう1試合スコットランド戦がありますのでそっちもがんばってほしいです!
NEWS板橋校室長
三木 裕