NEWSオータムスクールのおもしろ作文倶楽部の授業では、エーリヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』を取り上げて行いました。ケストナーは、ナチスに対して最後まで抵抗を続けたドイツ人として、当時は発行禁止処分も受けましたが、あまりの人気の高さに『飛ぶ教室』や『エーミールと探偵たち』などの児童文学はその処分を免れたそうです。ケストナーは『飛ぶ教室』の中で、このようなことを述べています。
『子どもの涙はけっしておとなの涙より小さいものではなく、おとなの涙より重いことだって、めずらしくありません。誤解しないでください、みなさん! 私たちは何も不必要に涙もろくなろうとは思いません。私はただ、つらい時でも、正直でなければならないというのです。骨のずいまで正直で。』
悲しいときには、悲しみましょう。そういうメッセージが見られます。この『飛ぶ教室』の主人公マルチンが、どのようなことを悲しんだか、そして、最後どのような喜びを得て、あたたかい涙を流したか。『飛ぶ教室』を読んで、味わってほしいと思います。
この本は、古きよき時代(当時のドイツは必ずしもよい時代とはいえないかもしれませんが)のもはや忘れ去られてしまった古典の一つなのかもしれません。けれども、そこにある思いは、決して古びることはないと思います。ケストナーは、詩人としても活躍しましたし、大人向けの小説もたくさん書いています。その一冊『雪の中の三人男』はユーモアと風刺があふれ、そしてなによりも心やさしいあたたかい思いたっぷりつまっているご機嫌な小説です。ぼくのとても好きな本です。秋の夜長、読書の秋の一冊として、機会がありましたらぜひ読んでいただければと思います。