コロボックル物語の作者佐藤さとるさん、うさこちゃん(ミッフィーちゃん)の作者ディック・ブルーナさんがあいついで亡くなられたというニュースがながれました。日本中の、世界中の子どもたちが楽しんだ物語の作者の訃報は、とても切ない気持ちになります。
佐藤さとる先生の訃報の記事を読み、いわゆる大人の文学と比べて、児童文学の世界というのは、まだまだ歴史が浅いのかもと思いました。佐藤さとる先生といえば、児童文学の世界ではもう神話のような存在という印象があります。日本の児童文学は、佐藤さとる先生をはじめ、松谷みよ子先生、寺村輝夫先生、大石真先生といったほぼ同世代の方々が長く活躍されてきました。もう児童文学の世界では神話の中にでてくるような方々です。そういった方々が、まだいらっしゃった、同じ時代にいた、という感覚は、児童文学の世界だからなのかもしれません。たぶん、とてもしあわせなことなんだと思います。
佐藤さとる先生のコロボックルシリーズのおもしろさはもちろんのことですが、ぼくの中で佐藤さとる先生ということで一番印象に残っている本は、佐藤さとる先生が他の作家のファンタジー作品を集めたものです。そして、その中にあった『日光魚止小屋』という一篇がとてつもなくおもしろく、あえてファンタジーの本の中に選んだのもすごいと思ったのでした。主人公は人間ですが、そこへ手紙を届けるのがカワセミで、お礼にエクレアをあげるというところから始まります。ナンセンスでユーモアにあふれた傑作でした。ああ、こういう物語もあるんだ、ありなんだ、と思った記憶があります。
東日本大震災のときに、ディック・ブルーナがメッセージを送ったという話は有名です。シンプルな絵に、深いかなしみがにじんでいました。うさこちゃんの本やイラストは、これからもずっと、作者をはなれて、子どもたちのそばにありつづけるでしょう。
子どもたちのために書かれたものは、それがほんとうにすぐれたものであれば、いつまでも残ります。ふたりの作品は、すでにスタンダードになっています。いまごろ天国で、コロボックルとうさこちゃんがいっしょに遊んでいると思います。
NEWS板橋校室長
三木 裕