- いまの音楽の授業では、いわゆる童謡と呼ばれる歌を歌わないようです。『こいのぼり』とか『背くらべ』、『春が来た』や『花』、『ペチカ』などなど……。聞いても「知らない」という子ばかりです。その分、ぼくが知らない歌を習っているようで、歌ってもらってもまるで聞いたことのない、今風のさわやかな歌をちがう小学校の子たちが合唱してくれたりします。小学校にもよると思うのですが、ちょっと残念です。
「いまはいまの歌があるのだから、昔の童謡を習わなくても、べつにいいんじゃないですか?」
そんな意見もありそうですが、必ずしもそうとは言えないと、ぼくは思います。たとえば、メインコースの授業でこんなことがありました。ぼくは生徒にこんな質問をしました。
「『山茶花』っていつごろの花かな?」
すぐに答えられる子はいませんでした。まあ、お花はあまり得意でない子も多いですので、それは仕方がないでしょう。なので、ヒントを出そうと思い、ぼくは歌いだしました。
「山茶花 山茶花 咲いた道……」
このあと当然、「そうか、たき火か! じゃあ、秋だね!」という答えが出ることを期待していたのですが……、みんなきょとんとしています。ぼくの歌があまりに下手だったからかと心配しましたが、どうやらそうではなく、そもそも聞いたことがないようなのです。
「かきねのかきねの曲がり角……」
一生懸命歌いましたが、だれもわかりません。いまの子は『たき火』も歌わないのだなあ、と驚いてしまいました。
童謡というのは、歌そのものもとてもいいと思うのですが、日本のすばらしい季節感を味わうためにも必要なのではないかと思うのです。さらに言えば、『日本語』としても童謡が歌われなくなるのは心配です。たき火を本当にしたことのある子は、いまどれだけいるでしょう。かきねという言葉もこのままでは、だれも知らない昔の言葉になってしまうかもしれません。こういう言葉をイメージできないと、本や国語の問題などに出てきたとき、うまく想像できなくなってしまうのではないでしょうか。
これをご覧になった、お父様、お母様、ぜひともおうちでお子様に、小さいころ歌った歌を教えてあげてほしいと思います。
NEWS青葉台校室長
三木 裕