私立中学校では入学前から新入生に宿題を出すところが多いようです。そのひとつに読書感想文を出す学校があり、いま個別教室の授業で手伝っております。本は生徒が選んだ『岳物語』です。椎名誠氏が自分の息子岳くんとのエピソードをつづった私小説です。入試問題でも何回か出ていたように思います。
小説家の家ですから多少他の家と違うところもあるだろうとは思うのですが、読んでみると思った以上にすごいです。さすが、怪しい探検隊の隊長……。岳くんもお父さんに負けずにけんかが強そうで頼もしい限りです。父親は勉強をいっさい教えていないそうですがプロレスの技はきちんと伝授したとか……。本の中では岳くんは小学5年生くらいですが、すでに岳くんは釣りに関してはすっかり父親を凌駕してしまっているようです。
非常に楽しく読んだのですが、今回は読書感想文を書かせなくてはいけませんのでただおもしろかっただけで終わらすわけにはいきません。いろいろと質問をしてみました。本のこと、家族のこと、自分のことなど……。その答えのひとつに、「自分もいつか親離れしていくだろうかと思った」というのがありました。すばらしいです。よく読めていますね。この本のテーマのひとつといっていいところだと思います。
いくつになったら親離れをするべきなのか。 親離れというのはどういうことを指すのか。 子離れの方がむしろ問題ではないか。
考えれば考えるほどいくつもいくつも疑問がわいてきます。父親と母親では違うでしょうし、男の子と女の子でも違いがあると思います。ふだん、自分も「そろそろ親離れしなくちゃなぁ」なんて意識している子はいないと思いますが、こういった本をきっかけにじっくり考えてみるのはとてもいいことなのではないかと思います。
保護者の方にもぜひ読んでいただいて、親子で話し合ってみるというのもいかがでしょう? そういう意味でもおすすめの一冊です。
NEWS青葉台校、センター北校室長
三木 裕