第146回のコラムで、小学生の間で国語の辞書がブームになっているという話題を取り上げました。調べたところにふせんを貼るというアイディアで、楽しく、励みにもなり、国語の辞書引きをみんなが自分からやってくれるという話です。国語の勉強で意味調べは本当に本当に大切ですから、ぜひ多くの学校でも取り入れてほしいと思っています。
さて、そのときのコラムでは、いかにも「子供たちに国語辞書を使ってほしい!」という文章を書きましたが、いま読んでいる本の中で、次のような文章を見つけました。演出家の久世光彦氏が向田邦子さんについて書いた本の中にあったものです。
『向田さんの書いたものをパラパラめくっていると、漱石ほどではないにして、半死語が次々に現れる。〈到来物〉〈冥利が悪い〉〈悋気〉〈按配〉〈目論見〉。まだある。〈気落ちする〉〈持ち重りのする〉〈了見〉〈昵懇〉……どれも他の言葉に置き換えにくい、暖かい人の体温のようなものを感じさせる言葉ばかりである。ちっとも古くはないし、わかりにくくもない。日本語の優しさと暖かさが、春の水のようにゆったりと伝わって来る。どうか国語辞典を引いて、そのぬくもりを感じ取って欲しい。』
日本語というのはいまももちろん使っているものですが、同時に、使い続けていかなければ消えていってしまうものでもあります。大人も(大人こそ!)楽しく国語辞書を使わなければいけないのかもしれません。うちにある向田さんの本を、また読んでみようかと思います。
NEWS青葉台校、センター北校室長
三木 裕