原田マハさんの『デトロイト美術館の奇跡』という本を読みました。フィクションですが、実話をもとにした物語だそうです。
市の財政が破綻し、デトロイト美術館の貴重な絵画作品を売却して、年金などの財政費用に充てるべきだという危機がありました。もしそうなれば、美術館は終わってしまうでしょう。それを救ったのは……。というお話です。美術館を愛する一市民、美術品を収集し寄付した人、キュレーター、など、さまざまな視点で描かれています。奇跡を起こしたのは、美術品を『友』として愛してきた市井の老人がきっかけでした。結果として、デトロイト美術館は、市の財政危機を救い、独立の組織として、今後も存続することになったのでした。
実話の重みに、アートの底力が感じられます。しかし、もし、日本の美術館で同じようなことが起こったとき、このような奇跡は起こるだろうか? と思いました。美術館だけではありません。歌舞伎座、能楽堂、寄席、コンサートホール、図書館、劇場、映画館などなど、文化・芸術に携わる施設はたくさんあります。しかし、このコロナ禍の中で、閉鎖しているところも多いと聞きます。岩波ホールもなくなると報道されていました。
NEWSのたくさんのコースが、芸術に触れる機会と、芸術を愛する感性を育み、将来の豊かな財産になることを願います。いつかそれが、奇跡ではなく、ごく自然なこととなりますように。