「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?」
こういうかなり刺激的な題名の本を読みました。羽生さんという方をご存知でしょうか? 将棋の世界で二十年ものあいだタイトルを取り続けているプロ棋士の方です。将棋に詳しくない方でも、羽生さんのお名前だけは知っているという方も多いのではないでしょうか。
かくいうぼくも将棋についてまったく詳しくありません。駒の動かし方くらいは子どものときに覚えたので知っていますが、定跡だの最新の棋風など、とにかくなにも知りません。ですが、なぜか昔から将棋や囲碁の名人、棋士たちについて書かれた本を読むのが好きなのです。とにかく魅力的な人が多いです。それで、この本も読んでみたわけです。羽生さんはもちろん、羽生さん以外にも魅力的な棋士たちがたくさん出てきてよかったです。
羽生さんだけがなぜそんなに強いのか? それについて、いろいろな面からアプローチ、分析されており、その内容については、実際にこの本を読んでみていただきたいと思います(そうして将棋の世界のすばらしさ、奥深さを少しでも知ってほしいということが書かれておりました)。羽生さんの将棋に対する考え方や取り組み方というのはすごいものがあるようです。将棋の真理を解明する、という言葉が出てきたりします。それをとことん考え抜くことを、羽生さんは心から楽しんでいるそうです。将棋に限らず、自分の限界まで考え抜くことを楽しめる人がどれだけいるでしょうか。そこに羽生さんの強さの理由の一つがあるようです。
そして、羽生さんの言葉として、もう一つぼくが感銘をうけたものがありました。『伝統と技術』ということです。将棋の世界というのはいまでも着物で対局を行ったりして、いろいろな伝統が守られている世界であります。しかし、実際の勝負の内容は常に最先端の技術を研究していなければ、あっというまに負けてしまうほど厳しいぎりぎりの世界でもあるのだそうです。こういう極端な両面を併せ持った世界というのは、たぶんほかのどの世界を探してもないのではないだろうか、と羽生さんは語られています。
日本のすばらしい伝統や文化と、常に進歩し続ける技術革新、この二つを持つところが将棋のすばらしさということですが、この二つを意識することは、どんな分野でも大事なことのように思いました。大いに刺激をうけた本でした。
NEWS板橋校室長
三木 裕