先日、ニュースで、将棋の王座戦というものが行われ、羽生王座が渡辺竜王に敗れ、20連覇ならずと出ておりました。いろいろと記録が掛かっていた戦いで負けてしまったのは残念ですが、それまで19連覇も!していたのですね。プロ同士のタイトル戦で、将棋に限らず20年近くも保持し続けるというのは、とてつもないことのように思います。その羽生さんからストレートでタイトルを奪取した渡辺新王座の今後の活躍も期待されます。
さて、将棋の勝負はどのように決まるかといいますと、もうこれ以上どうやっても王様の駒を取られてしまう状態になると負けになります。『詰み』といいます。お互いに相手の王様を詰ますために戦うわけです。遊びの勝負であれば、その最後の詰みの状態まで指します。けれども、プロとプロの戦いでは、そこまでは指さないようです。プロ同士ですから、もうこのまま指し続けても勝ち目は無いというところがお互いにわかるわけで、そうなったときに、もうやめることが多いということです。盤面ではまだ詰みになっていないのに、では、どうやって、プロの対局は試合を終えるのでしょうか?
プロ将棋の世界では、自分が負けを悟ったときに、自分から負けを認める(投了する、というそうです)ことによって試合が終わります。そして、これがすごいと思うのですが、負けを認めたその直後から『感想戦』が始まるのです。感想戦というのは、いま終わったばかりの将棋について、お互いに再検討し、どのような思惑で指したのか、もし違う手を指していたらどうなっていたか、などを話し合いをすることです。
まず自分で負けを認める、というのが一つすごいと思います。内心はものすごく言葉に出来ないくらい悔しいのは当然でしょう。しかし、テレビで名人戦などの終局の場面を見たことがありますが、その悔しさを、きちんと相手への敬意にして、その場で態度を乱している人は見たことがありません。
また、負けた直後に、勝った相手と検討するというのも、非常に悔しい場面だと思うのですが、必ず時間をかけて、時には何時間もかけて行うそうです。そこでしっかりと敗因を見つめないと、次の勝負に向かえないのでしょうか、なんとも厳しい世界です。
自分の負けを認めること。
そして、その負けの理由を見つめなおすこと。
テストの間違いなおしや、勉強の復習に通じることはもちろんですが、もっと広く、人が生きていくうえで、大事なことではないでしょうか。将棋の世界の厳しさと、純粋さに胸を打たれます。
NEWS板橋校室長
三木 裕