なにかの拍子に昔の曲が流れているのを聞いたりすると、なんともいえず懐かしい気持ちになって、当時のことがいろいろと思い出されてきます。好きだった曲はもちろんですが、その頃そう好きでもなかった歌が、妙に心に残ることもあります。音楽というのは、タイムマシンのような不思議な働きをしますね。
あれから10年も この先10年も
振り向かない急がない立ちどまらない
君だけをぼくだけを愛したときを
今も誇りに想うよ ずっと誇りに想うよ
(渡辺美里『10years』)
十年も二十年も
君のことを思うだろう
人混みにゆられながら
何をだいていくのだろう
(爆風スランプ『それから』)
BOYS & GIRLS
BOYS & GIRLS
十年経って出逢ったその時も
ラストは君と
(大江千里『BOYS & GIRLS』)
歌詞の中で10年という言葉が出てくるもので、いま思いついたものを並べてみました。10年前はまだNEWSに入っていなかった頃ですねえ。あの頃、ぼくはいったいなにを思って生きていたでしょうか。
身近にあるタイムマシンといえばもう一つ、本があります。はるか昔の本にはその頃の世界がつまっていますし、SF小説は遠い遠い未来を想像させてくれます。
ついこのあいだ、いまより数千年先の世界を描いている小説を読みました。アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』という本です。宇宙人と共存する世界で、人間の刑事がロボットの刑事とコンビを組んで事件を解決する1953年に発表された当時としてはおそらくかなり斬新だったろうと思われるSFミステリーです。そのラストシーンで、ロボットがこんなことをいいます。
「わたしにはわかりかけてきたようです。あるべからざるものの破壊、つまり、いわゆる悪の破壊は、この悪をいわゆる善に転換させるよりも正しくないし、望ましくもないと、いま突然わたしはそういう気がしてきたからです」
このあと、それまでロボットに対してずっと不安や嫌悪感を抱いていた人間の刑事が、仲間としてロボットの腕をとるところで終わります。
はるか未来の世界を描きながら、人間の善と悪や、機械文明との関わり方など、普遍的なことを作者は伝えようとしているように思いました。書かれたのはもう半世紀以上も前のことになりますが、しっかりとタイムマシンに載って、ぼくのところに届きました。これからも、たくさんのタイムマシンに乗りたいと思います。
NEWS板橋校室長
三木 裕