将棋の女流棋士とコンピュータの将棋対決について書かれた本を読みました。実際に対戦が行われたのは2010年10月で、コンピュータが勝ちました。結果については当時新聞などで読みましたが、とうとうコンピュータがプロ棋士にまで勝つようになったか、と思いました。
今回読んだ本は、コンピュータの製作者側と、女流棋士側双方のインタビューなどを含め、対戦の前から、対戦中のこと、そして、その少し後のことまでが書かれていました。
将棋の手や、コンピュータの技術的な部分など、難しくていまいちわからないところもあったのですが、二つの数字が印象に残りました。『53』と『169』です。
53というのは、女流棋士が、ある一手を打つまでに費やした時間(53分)です。3時間が持ち時間としてお互いに与えられていましたが、その中のかなりの部分をこの一手に使ってしまったのです。読みに集中しすぎてしまって、自分でもそんなに経っていたのかと驚いた、と書かれていました。もっと長い持ち時間の将棋では、一手に2時間使ったりということもあるようですが、棋士の人たちの集中力というのはすごいですね。将棋ファン以外にも大いに注目され、しかも機械と戦うという普段とはまったく違う状況でも、自分の世界に入り込めてしまうのですから。53分間、時間も忘れてなにか一つのことに集中できるなんて、どんなことでも難しいと思います。
そして、169ですが、これは台数です。女流棋士との対戦するために用意されたコンピュータが169台だったのです。たとえ、169台あったとしても単純に性能が169倍になるわけではないそうですが(また当日は、トラブルがありかなり少ない台数で対戦したということですが)、それでもプロ棋士の読みに匹敵する読みを同じくらいの時間でコンピュータにさせるためには、それだけの台数が必要なのだということでしょう。棋士の頭の中にはコンピュータ169台分(以上)の将棋が入っているのですね。本当にすごいです。
結果は敗戦でしたが女流棋士の試合後のお話など、とてもさわやかで好感がもてました。人間の力のすごさ、すばらしさが、コンピュータの進歩によって、よりわかったように思います。今後も対戦があるのでしょうか。また見てみたいです。
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕