このところ朝晩など急に寒くなってきました。お昼はあたたかいのですが、そのまま油断して腕まくりなどしていると、夜になって、ぶるぶるとふるえることになってしまいます。秋の夜長や読書の秋などといいまして、寝る前のふとんでの読書が楽しい時期でもあります。今回は、最近読んだ本2冊から、ぼくが思ったことを書いてみます。
1冊目、リリアン・J・ブラウン『猫は手がかりを読む』、ココというシャム猫が名探偵の推理小説です。猫が名探偵といえば赤川次郎『三毛猫ホームズ』が思い出されます。書かれた時期などはココのほうが早いようですが、日本に紹介された時期などはどうなのでしょう。ただ、同じ猫が名探偵といっても、ぼくにはずいぶん印象が違いました。
日本のホームズくんは、かなり積極的な名探偵な気がします。主人公を助けるためにずいぶん力を尽くしているような印象です。かたやココのほうは、もっとクールな印象です。気まぐれで、自分の気が向いたから推理してみた、そんな感じです。けれども、主人公を助けるために、犯人に飛び掛っていったところは、おお、と思いました。クールに見えて実は……。こんなところも猫っぽいところかもしれません。作者が、猫により多く愛情を注いでいるのか、推理小説に多く愛情を注いでいるのか、その違いが小説の印象に現れているように思いました。
2冊目は吉川英治『黒田如水』です。再来年の大河ドラマは黒田如水が主人公だそうです。信長、秀吉、家康とともに戦乱をくぐりぬけた知将の波乱万丈の人生はおもしろいドラマになりそうです。ところが、この本を読んで驚いたのですが、文庫本一冊だったのですが、わずか人生のうち6年分しか書かれていないのです。秀吉に会うところから始まり、毛利と戦うその直前で終わります。そのあいだも、城に幽閉され、息子を信長に殺される(竹中半兵衛のおかげで助かりますが)というドラマチックな場面もありますが、一つ一つの場面が細かく書かれ、一気に読み進めることができました。
この本は、もともとなにかに連載されていた物を一冊にまとめたものなのではと思いました。さて、来週は? そのつづきは? という感じで書かれているような気がしたのです。だから物語の中の時間があまりすすんでいないのでは、と。本の中ではまだ黒田勘兵衛で、如水になるはるか前に終わってしまいます。もしそうだとすると、いまの少年漫画誌に夢中になっている子どもたち(ぼくもその一人ですが)のように、黒田勘兵衛の運命をいっしょに追いかけていた人がきっと多かったのだろうな、と思いました。
読書の楽しみは、いろいろあります。こんなふうに勝手なことを考えるのもとても楽しいです。まだまだ秋の夜長はつづきます。これからも、もっともっと読みつづけていきたいと思います。
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕