先日行われましたセンター試験の採点が終わり、国語の平均点がここ十年くらいで一番悪く、200点満点で100点以下になったという記事を読みました。前年からくらべると10点以上落ちているようです。そして、その原因ではないかとして、現代国語の問題に小林秀雄の文章が使われていたからではないか、と書かれていました。
センター試験の翌日に新聞で問題を見まして、たしかに、「おお、今年は小林秀雄なのか、すごいな」と思いました。
なにがすごいのかをいま改めて考えてみますと、やはり『小林秀雄がすごい』ということになりそうです。評論家として、芸術家として、文章家として、その存在は、別格だったという印象(ぼくも同世代ではないので、あくまで本や、当時書かれたものからの印象となりますが)があります。実際、読んだ本といえば『考えるヒント』とあと数冊ですが、じっくり読まなければわからないところもあり、何度も同じページを行ったり来たりして読んだ記憶があります。
ところで、まったく偶然なのですが、今年になってある本を読んでいました。白洲正子『なぜいま青山二郎なのか』という本です。この本に出てくる青山二郎というのは、なんとも紹介しにくい人物ですが、当時最高の文化人で鑑賞家といった感じでしょうか。その青山二郎と小林秀雄はたがいに認め合う親友だったそうですが、青山二郎の鋭い批評に、あの小林秀雄が泣いてしまったというエピソードも紹介されていました。青山二郎と小林秀雄が仲たがいするところでは読んでいても胸が痛みます。白洲正子も含め、当時の人々が、まっすぐに、自分の信じるなにかのために生きていた様子が描かれている本でした。
小林秀雄はたしかに難しいかもしれません。ですが、センター試験ならそれぐらい出てもいいのではとも思うのです。難しいといっても、そこにある内容は、大学で何かを学ぼうという若者たちに必要なものがあると思います。そういう匂いや空気をセンター試験の最中に感じることは難しいでしょうが、高校生くらいになったら、ときにゆっくりと一冊、小林秀雄の本を背伸びして読んでほしいな、と思います。
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕