ぼくは、NEWSで、作文や国語を主に指導しています。学校の勉強、テスト対策、受験用の問題、いろいろとあります。国語の成績があがってくれればうれしいですし、希望の学校に受かったと報告してもらえるときの喜びも、とても言葉にできないほどです。
ただし、NEWSで先生をしていると、それだけではないな、とよく思います。たとえば、よその大手塾に通っている子が、国語だけぼくに習いに来ます。よそのテキストのフォローもしますし、その塾の宿題や、テストの見直しなんかも手伝います。どうして間違えたのかな、どういうところが苦手なのかな、と見ていくわけですが、弱点克服のヒントは、問題の中にだけあるものではありません。その子の性格や、感じ方、好きなこと、嫌いなこと、経験などもすべて密接に関わってきます。
そういったことを理解するためには、授業の中でのおしゃべりがかなり有効だったりします。ぜんぜん勉強に関係の無いお話をすると保護者の方に怒られてしまうかもしれませんが、ぼくはあえてそういう時間も入れます。ある程度学年があがったほうが増えるかもしれません。
みんなの話を聞いていると、いろいろなことがわかります。そして、みんなそれぞれいろいろな悩みがあったり、葛藤があったりすることを知ります。ああ、そういう考え方をするんだ、と驚いたりすることも。国語や作文では、そこがとても大事なのだと思います。よく、うちの子は読解力がない、とおっしゃられる保護者の方がおられますが、答えを間違える子のうちのかなりの割合で、感情表現が苦手で、そのために問題をうまく解釈できないという子がいます。でも、そういう子たちも、みんな話を聞けば心の中には豊かな感情が流れています。NEWSの先生は、国語に限らず、すべてのコースで、その豊かな水の流れをくみ出すのが仕事なのだと思うのです。
今回ご紹介する詩は、父から娘へ贈る詩です。ですが、NEWSの先生として、ぼくがみんなにあげたいものが書かれていたのでぜひご紹介したいと思いました。どうぞご一読ください(一部現代仮名遣いに変えました)。
奈々子に
吉野 弘
赤い林檎の頬をして
眠っている 奈々子。
お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
菜々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いが増えた。
唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。
お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。
ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。
自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。
自分があるとき
他人があり
世界がある。
お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。
苦労は
今は
お前にあげられない。
お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむずかしく
はぐくむにむずかしい
自分を愛する心だ。
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕