長く休館していたうちの近くの図書館も、いろいろ制限付きですが、また再開することになりました。まだまだ前のようにはいきませんが、本棚の前をうろうろして、おもしろそうな本を探す楽しみは、何物にも代えられません。
さて、さっそく本を借りてきたのですが、その中の一冊に、思い出の本がありました。『深夜の散歩―ミステリの愉しみ―』というエッセイ集です。福永武彦、中村真一郎、丸谷才一という純文学の大家三人が書いた本です。ぼくが借りたのは、その復刻版の文庫でした。うちに別の復刻版の本があります。さらに新しい復刻版が出ているとは知らず(昨年の10月31日に出たようです)、懐かしさもあって、すぐに借りてしまいました。
この本は、もともと『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』という翻訳ミステリの雑誌に連載されたものを1冊にまとめたものです(うちにも古本市で買ったものが1冊あります)。雑誌を出版していた早川書房から出版されました。いまから60年近く前のことです。その後、別の出版社から復刻されました。その復刻版の文庫本をぼくは持っているのです。同じくミステリ好きの父親の本棚にあったのを読んで、たぶん勝手にぼくのものにして、いまもうちの本棚にあるのでした。その本の奥付を見ますと昭和56年6月15日第1刷と書かれておりますので、それでも39年前の本となります。それが、いままた復刻されたようなのです。ずいぶん長い時間が経っていますね。感慨深いものがあります。うちにある本と比べてみますと、復刻版に追加されているエッセイがいくつかありました。これから楽しみに読みたいと思います。
今回の復刻版を見て、別の意味でも驚きました。この復刻版は創元推理文庫から出ているのです。東京創元社という出版社です。外国のミステリ好きには、早川書房と東京創元社は超2大ブランドです。その早川書房の本が、60年の時を経て、創元推理文庫から出る。ちょっとマニアな話かもしれませんが、ぼくのように古いタイプのミステリファンには、なんともうれしい話なのです。まるで、シャーロック・ホームズとアルセーヌ・ルパンが、いっしょに協力して事件を解決するような……。
久しぶりの図書館は、やはり、ぼくにとって特別な場所でした。図書館に通える幸せを忘れずに、これからも楽しみたいと思います。