三年ごとに発表される国際的な学習到達度調査『PISA』で、日本は数学的リテラシーと科学的リテラシーは世界トップレベルを維持しましたが、読解力は、前回よりもかなり下がってしまったと先日大きく報道されました。この調査は15歳の子を対象にしたもので、2003年のときの調査でも、読解力の順位が急落し、いわゆる『脱ゆとり教育』が推進され、その後順位は上がりましたが、今回の結果では、それでもまた読解力が下がっているということになってしまったようです。大変です! もっと本を読まなければ! どうしたらいいでしょう?
今回の問題を考えるとき気になる点として、一ついろいろな場所で指摘されているのが、テストがコンピュータで行われていることだと思います。前回もそうでしたが、紙のテストではなく、コンピュータで操作しながら解いていく問題なのですね。日本の子どもたちは、ゲームやチャットはよく使用していても、コンピュータで学習する機会が少ないのだとか。なので、操作に慣れていないのもあるのではないか、との指摘です。キーボードに慣れていない子は、文章を書くのにも時間がかかります。その分、記述問題の点数が下がっている可能性もあるかもしれません。
実際に、使用された問題をパソコンで見てみました。すると、思いのほか、やりにくいなと思いました。新聞で同じ問題を読んだときには気にならなかったのですが、問題文が横書きで出るのですね。国語以外の教科では横書きはふつうですが、長文の日本語を横書きで読むのは慣れていないので読みにくいな、とぼくは思いました。
そして、文の中に線がないのですね。日本の国語の問題は、本文のいろいろな場所に線が引かれています。線の『それ』が指していることを10文字で書きなさいとか、線の部分の主人公の気持ちを20文字以内で書きなさいとか、問題について線が引かれているものがほとんどです。なので、国語の問題を解くとき、その線の前後しか読まないで解いてしまったりして(それで合っていることも多いですが)、必ず一度は全文を読むように注意したりします。文中に線がないと、そういうことは絶対にできないわけで、日本の子どもたちは、それにも慣れていないのかも? と思ったりしました。
まあ、問題で問われていることも、国語に出てくるような心情問題とはちがい、いろいろな情報の中から正しいものを探す、というもののようで、読解力といえばたしかにそうですが、本をたくさん読めば身につくものともいえないような気がしました。もちろん、ぜんぜん読まないよりは、読んだほうが圧倒的によいとは思いますが……。調査の中でふだん本や新聞などを日常的に読んでいる子の方が正答率が高いというデータもあるようです。
この『PISA』調査の順位を上げるためには、そういう問題をたくさん解かせるのがいちばん早いわけで、パソコンの操作にも慣れさせ、問題を横書きで作ったり、線を使わない問題を作ったりすれば、それだけでも順位が上がるかもしれません。ただ、それでは対策のための対策をしているみたいで、真の読解力につながっているのかはわかりません。それよりも、やはり(いまなにかと話題の)記述力との両輪が必要なのではないかと思いました。
読むことと同じように、書く練習をすること。それが読解力につながると思います。ちゃんと内容が理解できていなければ書くことはできませんし、書くことによって整理され、理解が深まることも多くあります。今回の調査でも、記述問題をまったく白紙で出す子も多かったようです。大学入試改革の記述問題は今後まだどうなるかわかりませんが、やはり書く力は必要だと強く思いました。また、線の無い国語の長文問題というのも、個人的には作ってみたいと思いました。