前回、ゴールデンウィークに買いました大正時代に発行されたという『大人にも子供にも楽しく遊べる家庭遊戯法』という本をご紹介いたしました。とてもおもしろい本でしたので、今回も引き続き、ご紹介したいと思います!
二十一、耳こすり
これは、いまでいう『伝言ゲーム』です。その例文が『皆さん大変お澄ましですねえ』とか『お甘藷が食べたいわ』というところに時代が感じられますが、やり方などはまったく同じです。時の移るのも忘れるほど楽しい遊びだったようです。
二十四、小豆拾い
屋敷の真ん中に小豆を撒き散らして置き、竹の塗り箸を手に持った競技者が、決められた数だけ拾うというもので、実際にやると楽しそうです。人数が多い場合は、『ヂャン拳で源平両軍に分けて』というところにも大正時代の本という感じがします。このあと二十五番目の遊びの中にも『古風にいえば料紙硯、現代式でいえば罫の引いた洋紙に』とか、『天狗俳諧』とか、ちょっとこれはなんでしょう?という言葉が出てきてそれも読んでいると楽しいです。
二十七、ヘボ抜け遊び
いきなり説明がすごいです。『これは狐拳を団体的にやる壮大な遊びであります。狐拳というのは誰も知っているように、庄屋狩人狐の三つの形の一をして二人の者が勝負を決する一種の遊戯です。』……最初読んだときはよくわからなかった部分もあるのですが、かんたんにいいますとジャンケンをジェスチャーで行う遊びのようです。それを2列に向かい合って座った両チームが勝ち抜きで行います。そして、「ジャンケンポン」の掛け声ではなく「ヘボ抜け、ヘボ抜け、ヨイヤサのヨイヤサ」と全員が大声でいうそうです。皆非常の活気をもって愉快に遊ぶことが出来ます、と書かれていますが、たしかに盛り上がっている姿が目に浮かぶようです。しかし、ものすごい掛け声ですね。
二十九、動物見せ
小型の鏡と、それを隠す風呂敷を用意します。そこで『皆さん、今日は一つ何でもご所望の珍しい動物を私の魔術で御覧に入れます』と口上を述べて、一人ずつ部屋に呼んで、希望を言わせます。ゴリラといったとしますと、『ハハア、そうですか、いや、それは一寸骨が折れますが、マア貴女のことですから敗けて見せてあげましょう。ソラ御覧なさい、このゴリラの滑稽な顔を』こういって、風呂敷をどけると、そこに鏡があり自分の顔が映っているので吹き出してしまうといういたずらです。似たアイディアがどこか外国の動物園にあると聞いたことがありますが、おもしろくて、風刺がありますね。怒る人はいなかったのでしょうか?
三十三、お好きお嫌い
紙にいろいろな言葉を書いておき、それを見ずに先に「好き」か「嫌い」をいわせます。そして、いったあと紙の言葉を見てみんなで大笑いという遊びです。若いお嬢さんが「好きです」といったあと、紙に薩摩芋と書かれていたりすると大喝采は受け合いですなんて書かれております。ここで、子供客が多い場合として、「端艇(ボート)、野球、試験、落第、キャラメル」などを書くといいという例が載っておりました。大正時代の子供たちにボートが人気だったようです。
三十四、職業当て
チームに分かれ、ある職業の真似をして、もう一方が当てるという遊びです。幼稚園向けの遊びと書かれておりますが、意外に難しいかもしれません。これはただ当てるだけではなく、当てた後、皆で大急ぎで逃げる相手をつかまえて、はじめて勝ちになります。楽しそうですよね。
三十六、指輪咥え
粉状のものの中に指輪を入れて、手を使わず口で取る遊びです。運動会でよくありますね。『米国あたりではメリケン粉を使って遊ぶそうですが、それでは勿体ないから糠に換えました』と書かれており、糠の中に指輪を入れて遊ぶようになっています。いまではメリケン粉よりも糠のほうが見かけない気がしますが、当時はたいていのご家庭に糠があったのでしょうね。こういうところも古い本を読む楽しみの一つです。
このような感じで楽しい遊びがたくさんつまった本でした。とても楽しく読みました。なんともおおらかで、のびのびと楽しく遊ぶ大正時代の子どもたちの姿が、本の中から浮かび上がります。ちょっと意地悪ないたずらもいくつか紹介されており、いまではなかなかできないだろうなと思うものもありますが、当時はみんなきっと楽しく遊んでいたのでしょう。あと、大人数で遊ぶものが多いなあと思いました。おうちにたくさん人が集まって遊ぶということが、日常的にあったということなのでしょう。うらやましいと思いました。ゴールデンウィーク期間にたまたま古本市でなんと150円で買った本ですが、実におもしろかったです。またおもしろい本がありましたらご紹介したいと思います!
NEWS板橋校、NEWS青葉台校、NEWSセンター北校室長
三木 裕