いきなり泥棒になることをおすすめしているみたいなタイトルですが、そういう題名のミステリーがあるのです。はじめて読む作者の本でしたが、題名の通り、とてつもなく几帳面な泥棒が主人公です。マーティンという名前のその泥棒は、盗みに入る家について徹底的に調べ、入られたこと、なにかを盗まれたことすら気がつかれないようにして、泥棒を行います。物語の前半は、そのあまりの徹底振りがこと細かく記され、まるでなにかの解説書のような趣で、ちょっと退屈なところもあったのですが、後半、その盗みに入った家の危機を救おうとする辺りからがぜんおもしろくなり、一気に最後まで読んでしまいました。泥棒という悪い人間ですが、盗みに入るお得意様(?)の一家に愛情を感じ始め、自分の立場との葛藤に悩みながらも、命がけで助けに行く場面、そして、後味のよい最後の場面など、とても印象に残りました。おもしろかったです。
と、本の感想を書きたかったのもあるのですが、今回のコラムは、この本の題名の『べし』がちょっと気になったのでした。新しい本なのですが、あえて古典のような言い方をしています。助動詞の『べし』には、いろいろ意味がありまして、以下のものとなります。
【推量】 ~だろう、~ようだ
【意志】 ~う、~よう、~つもりだ
【可能】 ~できる
【当然・義務】 ~はずだ、~なければならない
【命令】 ~せよ
【適当・勧誘】 ~のがよい、~よう
今回の本の題名で考えますと、
『泥棒は几帳面でなければならない』
『泥棒は几帳面であれ!』
『泥棒は几帳面であるのがよい』
ここらへんのどれかかな、という感じがします。どれも、主人公のマーティンがいいそうです。あえていえば、『泥棒は几帳面でなければならない』でしょうか。読んだ人によって、すこし印象がちがうかもしれませんね。
なかなか国語の文法、古典の文法などは、細かくて、覚えることがたくさんあって、苦手だったり、嫌いだったりする子が多いと思います。ぼくもそうでした。でも、大人になって、みんなに教えるようになって、意外におもしろいところもあるな、と思うようになりました。今回のように、自分で言葉を見つけて、それについて考えてみたりすると、文法問題も、ちょっと身近なものになるかもしれません。そういった話も、授業の中で話せればと思います。