NEWSサマースクールで行う作文倶楽部の『読書感想文』コースで使用する、NEWSのおすすめの本をご紹介いたします。毎年、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書の中から、それぞれのグレードに合わせた本を1冊ずつ選びます。このコラムでも毎年ご紹介し、なぜこの本を選んだのかなどを書いておりますが、今回はそれと合わせまして、なぜ他の本は選ばなかったのか、という視点も混ぜて書いてみようと思います。
小学1、2年向け クレヨンからのおねがい! 文:ドリュー・デイウォルト ほるぷ出版 |
ケビンはクレヨンからの手紙を見つけました。そこには、それぞれの色たちからのお願いが……。
絵本ですが、文章量はかなりあります。1年生の子にはちょっと大変かも……と思いましたが、それぞれの色ごとの手紙という構成になっておりますので、読みやすく、また内容もおもしろかったので、この本を選びました。そのほかの本では、『かあさんのしっぽっぽ』もよいと思ったのですが、この本の重要な場面に、母娘がいっしょにお風呂に入るシーンがあり、とてもよい場面なのですが、感想文だと、とてつもなく恥ずかしがる子がいるので、ちょっとためらいました。とてもよい終わり方をするのですが、『クレヨンからのおねがい!』も、ラストシーンの楽しさは、本を読む爽快感につながると思いまして、最終的には、こちらに決めました。楽しく読みながら、他者の視点というものを学んでほしいと思います。
小学3、4年向け パオズになったおひなさま 作:佐和 みずえ くもん出版 |
夏愛花の祖母は幼い頃、戦争のため中国から帰国しました。祖母がまだ少女だったころ、中国人の少女と友達になり……。
読書感想文の課題図書に、戦争を扱った作品は、ほぼ毎年選ばれております。そして、おそらく内容も想像がつくのではないかと思われます。戦争の悲惨さ、むごさ、平和の大切さ、など、絶対的なテーマが並びます。今回、中学年向けの本では『お話きかせてクリストフ』という本も、アフリカのルワンダのお話をとりあげています。ちょっと読みたくないなあ、という子どもたちの声が聞こえてきそうです。でも、課題図書だからしぶしぶ読む、というのも、ぼくは、実はありなのではと思うときがあります。いやいやだけど読んでみた本に心をゆさぶられるということもあると思うからです。この『パオズになったおひなさま』は、大切なテーマを、真正面から書くことによって成功した本だと思いました。『お話きかせてクリストフ』よりも、この『パオズになったおひなさま』を選んだのはこちらの本のほうが、直球勝負で、そここそが大切だと思ったからです。読んでいて、つい涙ぐんでしまいました。たくさんの生徒さんに読んでほしいと思います。
小学5、6年向け ぼくの、ひかり色の絵の具 作:西村 すぐり ポプラ社 |
小6の男の子ユクは絵を描くことが大好きです。けれども納得のいかない絵を担任に描かされて……。
今回一番悩んだのが、高学年向けの本でした。『ぼくの、ひかり色の絵の具』という本を選んだのですが、この本は、もしかすると読者を選んでしまう本かもしれないとも思ったからです。恋愛の要素がわりと多めに入っている、植物の描写が多い、など、どちらかというと女の子のほうが好きなお話かもと思います。もう一冊『ぼくとテスの秘密の七日間』も非常におもしろく、最後までどちらにしようか悩みました。『ぼくとテス~』は、父親を知らずに育った少女が、秘密で父親と会い、最終的には家族とはなにかを考える物語です……と書くと、主人公はその少女テスのようですが、テスと会ったばかりの男の子が主人公です。最後に大活躍をします。個人的には好きな本なのですが、読書感想文としては書きにくいのではという思いがぬぐえませんでした。共感する、反発する、どちらでもいいのですが、主人公と、読者の間になにかがないと感想文は書きにくいと思うのですが、この本の主人公たちの世界が、どこか外国映画やドラマの中のようで、悩みも、喜びも、ちょっと距離感を感じるような気がしたのです。むしろ本好きの大人に読んでほしいと思いました。
そして、選んだ『ぼくの、ひかり色の絵の具』という本の主人公は、あまりに自分の中に思いがありすぎて、言葉がすぐに出てこない男の子です。いろんな人に誤解され、怒り、傷つきます。ですが、その男の子は、ハネズという女の子と出会い、自分の気持ちを伝えることの大切さに気づいていきます。現実にもこういう子がいると思います。また、どんな子にも、少しはそういうところがあるのではとも思います。そういう子たちに、外への扉を開いてほしい、そのきっかけになってほしいと思い、この本を選びました。上質のカタルシスもあり、読後感はとてもさわやかです。あとがきにあります作者のことばを引用します。
たくさん考える、やさしい心をもった「口べた」さんを応援したくて、この物語を書きました。
今年の読書感想文でも、たくさんの子どもたちのことばに会いたいと思います。みんながなにを書いてくれるのかとても楽しみです。本が好きな子も、本なんて大嫌いな子もNEWSに来てください。NEWSはみんなの友達です。
NEWS板橋校室長
三木 裕