中1の女の子に国語を教えていました。『竹取物語』です。歴史的仮名遣いや係り結びといった、古典の中で試験に絶対に出るよ、というところを教えておりました。すると、その女の子がふといいました。
「うーん、あるだろうね」
光源氏のような人がいたかはわかりませんが、当時の恋のエピソードは取り入れられているかもしれません。紫式部本人の体験かどうかはともかくとして……。多少の脚色はあるでしょうが、ぜんぶがぜんぶ想像ではないような気がします。そして、つづけて中1の女の子はいいました。
どうでしょう? 正直そんなこと考えてみたこともありませんでした。光る竹? 三寸ばかりなる人? 天の羽衣? 不死の薬? 世界で最初のSF小説といわれたりもするそうですが、じつは本当にあったことだった?
まあ、さすがにそれはないでしょう。でも……。
こんなふうにいわれると、竹取物語もまるっきりぜんぶ想像だったのだろうか? と、考えてしまいます。もし、空から光る車のような船が宇宙から飛んできて、それを見た人が……。科学で証明できないことがすべて想像であるとはいえないですよね。竹取物語が本当にあったことを書いているという発想といいますか、想像に、まずは負けたと思いました。国語の教科書に出てくる古典の教材ではなく、いまも生きているすてきな物語として、読んでくれているわけですから。学校のテストで、こういうことを聞いてくれたら、みんなもっと古典が好きになってくれると思うのですが。
いま、鬼や河童はどうしているのでしょうか。まだ彼らが生きていられる場所はあるでしょうか? 月にうさぎやお姫様はいるでしょうか? また千年後には、いまとちがう答えが出ているかもしれません。
NEWS板橋校室長
三木 裕