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第117回

作文に一番必要なこと(9/3)


里見ク『文章の話』という本を読みました。最初に出たのが、昭和12年4月27日刊ということですから、いまからもう70年以上も昔に書かれた本です。作家里見クが小学生を対象に作文(当時は『綴り方』と呼ばれていました)の書き方を指導した本です。いろいろと、現代でももちろん通じる内容が随所に出てきます。以下のようなものは、そのまま、おもしろ作文倶楽部の中で使いたいような言葉です。
『書きたいことが、胸いっぱいたまって来るまで、筆をとらないこと。
小細工をせず、思ったままを、素直に書くこと。
屁理屈を並べず、感覚的に書くこと。
以上、三つの条件が、内容を充実させるもっとも好都合なものと言っておきましょう。』
 この本の特長は、作文指南の本ではあるのですが、書き方よりも大事なこととして、次のようなことを述べている点だと思います。
『私の『文章の話』は、大体、「文章以前」に力点が置かれています。即、人間として立派でなければ、いい文章は書けない、立派な人間になるには、……これが、この本の特色です。』
 立派な人間になるように、などと文豪に言われてしまうと、ひたすらお堅いまじめすぎる内容かと思われてしまいそうですが、決してそんなことはありません。平易でわかりやすく、そして、ユーモアあふれる文章になっています。たとえば、こんなところをご覧下さい。
『「雪のように白かった」
これなど、いかにも白そうな感じをうける譬喩ですが、理屈を言うと、降りやんだ翌日の、東京市内の雪などは、洗いたての褌の白さに遠く及ばないのですけれど、そうかと言って、
「褌のように白かった」
 では、ちっとも、白さも、清潔さもうけとれないでしょう。』
 
 これほどわかりやすく、おもしろい比喩の表現はめったにありません。読みながらつい吹き出してしまいました。
 この本は、子供向けのものですが、内容は、子供にもわかりやすく、かつ大人にもおもしろい本だと思いました。里見クは、父兄宛としてこのようにも書いています。
『父兄の方々にも、是非とも一読を煩わしたい。イギリスで出たこの種の本に、「子供たちと、彼らの両親に」を標語として掲げているのがありましたが、ほんとうのことを言えば、わざわざそう註文されないでも、自分の子供たちに勧める本なら、ざっとなりとも、一応目を通すのがあたりまえでしょう。』
 いまお子様が読まれている本をいっしょに読んでみてはいかがでしょうか。そして、いっしょにその本についてお話をしてみてはどうでしょう? もうすぐ読書の秋ですから……

NEWS青葉台校室長   
三木 裕

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