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第107回

6月7日のこと@ 氷室冴子様へ(6/13)


6月7日の新聞に、氷室冴子氏、野田昌宏氏の訃報の記事が載っていました。ともに愛読した作家さんでした。
 氷室冴子さんの本は、いわゆる少女小説と呼ばれるもので、表紙からして、かなりかわいいものです。どういうきっかけで学生時代のぼくが読んだのかあまり覚えていませんが(たしか友達に教えられてだったような気がします)、本屋さんで買うときに多少の(かなりの)恥ずかしさは感じつつも、たくさん読んでいました。
 好きな作品は人によって分かれると思いますが、ぼくの中の特別な一冊は『シンデレラミステリー』という作品です。『シンデレラ迷宮』という作品の続編で、ちょっぴり切ない恋物語であります。
 
 本当に、本当に久しぶりに、この『シンデレラミステリー』という本を手に取り(まだちゃんと本棚にあるのです)、一番好きだったところを読み返してみました。そして、いまもまたやっぱりじーんとしてしまいました。
 この物語の主人公の女の子は、現実の世界がうまくいなくなると、自分が好きな本(『ジェーンエア』など)の主人公たちがいる別の世界へ来てしまいます。一種の逃避といえるでしょう。けれども、その世界でさまざまな経験をし、また現実へ戻っていきます。ぼくが好きなのは、その現実へ戻るときに、本の主人公の一人が、女の子に話しかける場面です。
『じゃあ、そのクッキーを食べる瞬間にね、ほんの少しだけ、あたい達を思い出して。あんたの未来が幸福に輝くよう、祈りながら消えていった旧い友達のことを、その時だけ、思い出して。そしたら、その後は忘れてしまっていいから。』
 いつまでも本の世界にいてはいけない、現実の世界でちゃんと生きていって、もうこっちへ帰ってきてはいけない……。
 たぶん、大人になるというのは、こういうことなのでしょう。その瞬間の切なさをこれほど見事に切り取って表現した作品は見たことがありません。本が大好きないまの子供たちにもぜひ読んでほしい作品です。

NEWS青葉台校室長   
三木 裕

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